雌だけを産する大量増殖に適したマメハモグリバエ幼虫寄生蜂の発見

タイトル 雌だけを産する大量増殖に適したマメハモグリバエ幼虫寄生蜂の発見
担当機関 福岡県農業総合試験場
研究期間 1998~1999
研究担当者 大野和朗
嶽本弘之
発行年度 1998
要約 マメハモグリバエの幼虫寄生蜂ハモグリミドリヒメコバチNeochrysocharis formosaでは交尾雌が雌卵と雄卵を、未交尾雌は雄卵のみを産下するが、野外個体群から未交尾でも雌卵のみを産下できる産雌性単為生殖系統を発見した。福岡県農業総合試験場・病害虫部・野菜花き病害虫研究室
背景・ねらい 一般に寄生蜂では未交尾の雌は雄卵(未受精卵)しか産下できず、また任意交配をする種では雌蜂は雄卵と雌卵を1:1の割合で産下する。さらに、大量増殖を目的に雌蜂を集団飼育し、産卵させた場合には、雌蜂間の相互作用により雄卵の割合が高くなり、性比(雌率)が低下する。しかし、マメハモグリバエの生物的防除や総合的な害虫管理を目的とした天敵の大量生産ではこのような性決定様式は天敵の生産効率の低下につながり、放飼した施設内での増殖率の低下をも引き起こすことになる。そこで、土着天敵の性決定様式を明らかにし、大量増殖に適した系統を選抜する。
成果の内容・特徴
  1. 交尾をせずに、雌だけを産することのできる産雌性単為生殖系統の幼虫寄生蜂(ハモグリミドリヒメコバチ)を発見した。福岡県内の系統では性比(雌比)は低いが(表1)、鹿児島県および宮崎県で得られた系統では性比が極めて高い(表1および表2)。
  2. 雌を多く産する鹿児島産の系統に抗生物質テトラサイクリンを餌の蜂蜜に混ぜて投与したところ、性比が低くなったことから、この系統では卵巣内の共生微生物(ボルバキア)により性比が調節されている可能性が高い(表2)。
  3. 大量増殖では、産雄性単為生殖系統は産雌性単為生殖系統の2倍近い次世代を産するが、前者では羽化蜂の性比が雄に偏るのに対して、後者では雌に偏る(表3)。このため、天敵の大量増殖には産雌性単為生殖系統が有利である。
成果の活用面・留意点
  1. 産雌性単為生殖と従来の産雄性単為生殖系統が地域個体群の中に混在し、両系統間での交雑では細胞質不和合による妊性が低下する可能性も指摘されているため、系統の維持には十分な注意が必要である。
  2. 性比調節に関わるボルバキアは抗生物質や高温に弱いため、ボルバキアに感染した産雌性単為生殖系統の維持には注意が必要である。
  3. 今後天敵としての産雌性単為生殖系統の有効性を検討する予定である。
図表1 220969-1.gif
図表2 220969-2.gif
図表3 220969-3.gif
カテゴリ 病害虫 害虫 くり シカ 生物的防除 土着天敵

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