タイトル |
棚田の災害危険性を評価するための立地条件因子 |
担当機関 |
九州農業試験場 |
研究期間 |
2000~2000 |
研究担当者 |
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発行年度 |
2000 |
要約 |
豪雨による法面崩壊が原因で生じた棚田の崩壊規模の大きさは、水田面積の規模に依存するとともに、水田面積比率と平均勾配を基軸として複数の属性を加えた水田団地スケールのマクロな立地条件因子によって分類できる。九州農業試験場・生産環境部・資源評価研究室(九州沖縄農業研究センター環境資源研究部資源評価研究室)
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背景・ねらい |
現在、景観の保全や国土保全など農業の多面的機能維持を目的として、中山間地域に広がる棚田を保全するための緊急的な行政施策が展開されており、棚田の災害危険性に対する評価技術を早急に確立しなければならない。棚田の災害の殆どを占める法面崩壊現象は、偶発性、突発性の強い現象であるため、ピンポイントの発生予測は困難である。そこで、この現象を水田団地スケールで単年の平均化された崩壊土砂量として評価する。評価には、去る平成9年の豪雨(梅雨期、台風期)が直接の引き金となって生じた宮崎県G町の法面崩壊事例(135件)を使用する。降雨による外力を一律と仮定し、崩壊土量と相関の強い棚田の立地条件因子を因子分析によって選び出す。
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成果の内容・特徴 |
- 単位水田面積あたり棚田の崩壊土量を「崩壊規模」と定義し、この量を図1のように水田面積を横軸にとって整理すると、水田面積が小さくなるほど、「崩壊規模」の大きい団地が出現する傾向が得られる。このことは、水田団地面積で捉える「崩壊規模」の現れ方が、評価面積の括り方と密接な関係を持つことを示す。
- 既存の50mメッシュ標高データから得た団地別「平均勾配」、土地利用(水田、畑、牧草地、樹園地)別の全団地面積に対する「面積比率」、土地改良基本調査による「排水不良水田面積比率」を基に因子分析を行うと、図2右の軸に示される主要な二つの因子が得られる。図中の凡例(×●)の分布を見ると、第1因子が大きい立地条件で「崩壊規模」の大きなグループ(×)が集中する傾向がある。また、「崩壊規模」の小さなグループ(●)は相対的に第2因子の大きな方に数多く集まっている。
- 第1因子は面積を基準とした土地利用別割合に関する因子で「水田面積比率」の寄与率が高い。第2因子は「平均勾配」の寄与率が高い因子である。
- 面積のほぼ同等な(10~20ha)10団地分について、耕区規模の立地条件因子(耕区数、耕区面積、傾斜)を集計して整理を行うと(図2左)、耕区規模の立地条件因子が、水田団地規模の上記第1、第2因子に反映される関係が得られ、第1、第2因子の「崩壊規模」に対する立地条件因子としての合理性を示唆している。
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成果の活用面・留意点 |
- 降雨条件を因子として評価できれば、棚田崩壊土量の定量的推定が可能になる。
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図表1 |
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図表2 |
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カテゴリ |
水田
中山間地域
評価法
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