タイトル |
高温条件下におけるイネの受精率は湿度が高いほど低下する |
担当機関 |
(独)農業・生物系特定産業技術研究機構 九州沖縄農業研究センター |
研究期間 |
2002~2006 |
研究担当者 |
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発行年度 |
2003 |
要約 |
イネの出穂開花期における高温不受精では大気の湿度が高いほど、穂の温度が高くなるため葯における花粉発育が不充分となり、頴花の受精率が低下する。
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キーワード |
イネ、出穂開花期、高温、受精、ファイトトロン
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背景・ねらい |
熱帯・亜熱帯地域ではイネの高温障害が度々発生しているが、今後の地球温暖化にともない国内でも被害の発生することが懸念される。中でも出穂開花期の高温は、イネ頴花の受精を阻害し収量の著しい低下を引き起こすため深刻な問題である。既往の研究から、開花期の気温が摂氏32~36度になるとイネの不受精が発生することが知られているが、気温が同じでも湿度が異なる場合に不受精の発生率がどのようになるかは不確定である。また、湿度が受精率に影響を与えるメカニズムについて穂の温度の関与していることが予想されるが、その検証例はない。温暖湿潤気候下での高温不受精の発生リスクを評価する上で、湿度の影響を明らかにすることが重要である。そこで、出穂開花期の大気の湿度がイネの受精率に与える影響とそのメカニズムを実験的に調べた。
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成果の内容・特徴 |
- 出穂開花期に高気温条件(摂氏36度)に曝されたイネ4品種(ヒノヒカリ・ユメヒカリ・IR24・IR36)の受精率は、通常の気温条件(摂氏30度)の場合に比べて低下する。同じ高気温でも大気の相対湿度が65%以上の場合には、湿度の高いほど、風の有無に関わらず全ての品種で受精率は低下する。(図1)
- 気温が高いほど、穂の温度も高くなる。また、気温が同じ場合でも湿度が高いほど、穂あるいは葉の表面における蒸散が減少し潜熱輸送量が減少するため、穂の温度は高くなる。(図2)
- 穂の温度が高いほど、葯における充実花粉の比率は低下する。また、葯における充実花粉の比率が小さいほど、頴花の受精率は減少する(雄性不稔)。すなわち、湿度の影響は、穂の温度の違いを通じて葯の花粉発育に反映され、それが受精率の違いにつながる間接的な影響である。(図3、図4)
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成果の活用面・留意点 |
- ある気象条件下でのイネの高温不受精の発生リスクを評価する上で、湿度の影響を加えたより正確な評価が可能となる。また、イネ品種の高温不受精に対する耐性を考慮する際に、その一部を穂の温度特性(蒸散特性)によって説明できる可能性を示す。
- 湿度が極端に低い場合には、気孔の閉鎖により蒸散量が減少し、逆に穂の温度が高くなることも予想されるため、適用には注意が必要である。
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図表1 |
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図表2 |
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図表3 |
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図表4 |
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カテゴリ |
亜熱帯
高温対策
品種
輸送
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