タイトル |
早生ウンシュウの高うねマルチ栽培による省力および収益性 |
担当機関 |
福岡農総試 |
研究期間 |
2001~2003 |
研究担当者 |
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発行年度 |
2004 |
要約 |
高品質果実の省力的生産システムである早生ウンシュウの高うねマルチ栽培は、10a当たり労働時間が慣行露地栽培の13%、マルチ栽培の21%短縮する。その経営費は慣行露地栽培より6万円、マルチ栽培より3万円程度高くなるが、単価が上昇し、収益性が高まる。
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キーワード |
早生ウンシュウ、高うねマルチ栽培、労働時間、農業所得
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背景・ねらい |
ウンシュウミカンの高うねマルチ栽培は、高品質果実の生産技術として福岡県北部のカンキツ産地主体に面積が拡大している。早生ウンシュウ「山下紅早生」の高うねマルチ栽培では、樹齢10年生前後には樹の拡大が低下し、収量、品質は安定化して成園に達する。さらに、作業面では、収穫の際に脚立が不要であり、腕の挙上、脚立作業、腰部の前傾等の身体に負担の大きい作業の頻度が低下し、軽作業化が図られて収穫時間が早まることをこれまでに明らかにした(2001、2003年度九州農業研究成果情報)。しかし、高うねマルチ栽培は開園費が高く、また栽培年数が浅いため経費試算が十分には検討されていない。そこで、福岡県糸島地区における高うねマルチ栽培園と県内カンキツ産地の慣行の露地栽培園およびシートマルチ園との比較を行い、高うねマルチ栽培の導入による労働や費用等の効果を明らかにする。
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成果の内容・特徴 |
- 高うねマルチ栽培では、根群域をうね内に制限し、うね底面の防水シートと表面のシートマルチ処理で水の侵入を遮断して、点滴かん水によってかん水の省力化と品質管理ができる。また、密植による垣根状の栽植で収量を高め、棚施設利用による誘引、枝つりで葉数、収量を確保できるシステムである(表1)。
- 労働面では、高うねマルチ栽培による低樹高化、作業道確保等で摘果、収穫等の作業時間が短縮できる。一方、枝つり、水分管理等の作業が新たに発生する。10a当たりの労働時間は167.5時間となり、慣行露地栽培より25.5時間(13%)、慣行マルチ栽培より44.5時間(21%)の時間短縮が図られる(表2)。
- 高うねマルチ栽培の10a当たり経営費は、肥料費が安くなるが、開園費、密植による苗木代等の償却費、マルチによる諸資材費が高くなり、慣行露地栽培より60.3千円、慣行マルチ栽培より28.6千円高くなる(表2)。
- 反収は高うねマルチが3,000kgで慣行露地栽培より500kg、慣行マルチ栽培より300kg少なくなる。調査事例のJA糸島の販売実績では単価は350円/kgであり、粗収益が増加するため、農業所得は636.2千円となり慣行露地栽培より359.7千円、慣行マルチ栽培より62千円増加する。試算では、高うねマルチ栽培において慣行露地栽培およびマルチ栽培と同等の所得を得るための単価は、それぞれ230円/kg、330円/kgである(表2)。
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成果の活用面・留意点 |
- 高うねマルチ栽培の導入、推進の資料として活用できる。
- 同等の農業所得を確保するには各々50円/kg程度高い単価が必要になる。
- 高単価に販売するためには、果皮色が濃い「山下紅早生」などを用いたブランド化商品作りが必要である。
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図表1 |
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図表2 |
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カテゴリ |
肥料
温州みかん
経営管理
省力化
低樹高
その他のかんきつ
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