タイトル |
飼料イネ栽培における成型牛糞堆肥の肥効と跡地土壌への影響 |
担当機関 |
(独)農業・生物系特定産業技術研究機構 九州沖縄農業研究センター |
研究期間 |
2003~2005 |
研究担当者 |
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発行年度 |
2005 |
要約 |
飼料イネ栽培における成型牛糞堆肥の窒素利用率は施用年で10%程度で、残効のため堆肥約2kg/m2の3年連用によって化学肥料無施用でも化学肥料施用時と遜色ない収量が得られる。堆肥施用によって、跡地土壌ではカリウムやリンが顕著に増加するが、カリウムは数年の無施用栽培で消失するのに対し、リンは消失しにくい。
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キーワード |
飼料イネ、成型牛糞堆肥、窒素、リン、カリウム、土壌、連用
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背景・ねらい |
近年、水田の地力低下が問題となっている。牛糞堆肥施用によって地力が向上することは従来より知られているが、畜産地帯から離れた水田地帯では堆肥の運搬などの労力から牛糞堆肥の施用が難しい。畑地においては、輸送や取り扱いを容易にした成型牛糞堆肥の利用が進んでいる。そこで、水田においても成型牛糞堆肥の利用を図るため、まず食用イネに比べて窒素必要量が多く、窒素多量施用による食味への影響が問題とならない飼料イネ栽培において成型牛糞堆肥を施用した場合の肥効と跡地土壌への影響を明らかにする。
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成果の内容・特徴 |
- 代かき後田面水の硝酸態窒素は、成型牛糞堆肥1,2,4kg/m2施用で40,80,180mg/L程度と高くなる。硝酸態窒素は、その後、作土中を含めて1週間以内に消失する。
- 成型牛糞堆肥の施用によって、施用後約2ヶ月間の土壌溶液のアンモニウム態窒素濃度が高まる(堆肥2kg/m2連用で化学肥料20g/m2と同程度の7mg/L程度、図1)。堆肥施用後2ヶ月以降のアンモニウム態窒素における寄与は小さいが、土壌溶液の有機態窒素濃度が高く推移し、窒素が穏やかに供給される。
- 施用当年における成型牛糞堆肥の窒素利用率は10%(6~15%)程度であり、翌年以降への寄与は前年の50%弱である(図2)。
- 堆肥を補うために施用した化学肥料の乾物収量への効果は、堆肥の連用年数と施用量の増加によって低下し、堆肥2kg/m2の3年連用では、化学肥料を補わなくても、窒素20g/m2施用時に匹敵する乾物収量(6月中旬移植で1.8kg/m2程度)が得られる(図3)。
- 土壌中の全窒素は、4年間の4kg/m2程度の堆肥連用によって2mg/g程度(図4)、可給態窒素量は100μg/g程度増加する。いずれも、施用後無施用で経過した場合、一定の割合で減少するが、3年以上の残効がある。
- 成型牛糞堆肥1kg/m2の施用で、リンやカリウムは必要量以上に供給できる。堆肥施用による土壌の無機養分の増加割合は、カリウム(K)>リン(P)=マグネシウム(Mg)の順で大きいが、その後数年の無施用栽培における低下割合はK>>P>Mgの順で大きく、低下割合が大きいKは堆肥施用を止めることで比較的速やかに消失する(図4)。
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成果の活用面・留意点 |
- 堆肥中窒素の利用率が低下しないように、堆肥施用後数日以内に代かきを行う。
- 供試した成型堆肥は尿全量入りの肉牛糞オガクズ堆肥由来で、乾物割合は85-90%、現物当たりN=25mg/g、P=15mg/g、K=30mg/g程度で、年次的に安定していた。
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図表1 |
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図表2 |
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図表3 |
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図表4 |
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カテゴリ |
肥料
水田
肉牛
輸送
良食味
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