タイトル |
サトウキビ斑点病菌に対するサトウキビ各品種・系統の反応と発生調査 |
担当機関 |
鹿児島県農業開発総合センター大島支場 |
研究期間 |
2005~2006 |
研究担当者 |
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発行年度 |
2007 |
要約 |
鹿児島県で初発生した「サトウキビ斑点病」に対して真性抵抗性を示すサトウキビ品種・系統はなかった。しかし、発病してもサトウキビの生育は健全株と変わらなかった。また、現地サトウキビほ場において斑点病の発生は確認されなかった。
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キーワード |
サトウキビ斑点病、抵抗性品種、発生調査
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背景・ねらい |
Byther and Steiner(1972)は、ハワイでCurvuralia lunata(斑点病菌)を含む4種の菌がサトウキビの苗立ち枯れを引き起こすことを報告した。発芽3-4日後のサトウキビ実生苗(種子繁殖)は菌の感染により枯死するが、2-3週間を経た苗は枯死しないとしている。そこで斑点病菌の各サトウキビ品種・系統に対する病原性を採苗ほからとった茎部苗(二節二芽苗、栄養体繁殖)の幼苗及び成茎(成葉)で調査するとともに現地ほ場での発生を調査した。
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成果の内容・特徴 |
- 大島支場内露地ほ場の春植えサトウキビ茎部苗において、約3葉期の幼苗(約15cm)に斑点病菌を噴霧接種した。供試した4品種35系統の全ての接種葉に赤褐色斑点の病徴が発現し、発病度は、軽~中度(0.7~2.0)であった(表1)。また、赤褐色斑点を発病した幼苗の生育は無接種の健全苗と変わらず、枯死株の発生は認められなかった。
- 斑点病菌の接種試験を行ったほ場では、生育中期から成葉にも赤褐色斑点の発生が観察された。これらの病斑から斑点病菌のほかにColletotrichum属菌(赤腐病菌)、Bipolaris属菌(眼点病菌)が分離された(表2)。
- また、斑点病の初発生を確認した天城町のメリクロン苗施設から、徳之島内、奄美市笠利町に苗が供給されており、これら地域のサトウキビほ場では葉に赤褐色小斑点症状を示す株が多数認められた。赤褐色斑点部から、菌の分離を行ったところ、斑点病菌は分離されなかった(表3)。斑点病菌と分離された赤腐病菌、Leptosphaeria属菌(輪斑病菌)および眼点病菌の3菌をサトウキビ品種Ni17に噴霧接種した結果、初期症状は、斑点病と同様の微小な赤褐色斑点を生じた(データ省略)。これら斑点性の病害と斑点病は、初期病徴での見分けが困難であった。
- 以上のことから、本病原菌は多くの品種・系統に病原性を有するが、生育不良及び枯死には至らず、現地調査でも斑点病の発生が認められなかったため、採苗ほからとった茎部苗(栄養体繁殖)による栽培では本病による被害はほとんど発生しないと考えられる。
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成果の活用面・留意点 |
- 本病原菌は多くの品種系統に病原性を有するが、採苗ほからとった茎部苗(栄養体繁殖)による栽培ではほとんど問題にならないと考えられる。
- 斑点病の症状は、眼点病、赤腐病、輪斑病及び葉焼病などによる斑点性の病害と混同しやすいので診断の際には注意する。
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図表1 |
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カテゴリ |
さとうきび
抵抗性
抵抗性品種
繁殖性改善
品種
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