タイトル |
15Nトレーサー法で推定したサトウキビの施肥窒素利用率 |
担当機関 |
鹿児島県農業開発総合センター徳之島支場 |
研究期間 |
2005~2006 |
研究担当者 |
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発行年度 |
2007 |
要約 |
15Nトレーサー法で推定したサトウキビ`NiF8'の施肥窒素利用率は、春植え栽培で46%、株出し栽培で51%で、基肥と追肥の利用率は、作型によって大きく異なる。また、サトウキビが吸収する窒素の約80%は、施肥由来窒素である。
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キーワード |
15Nトレーサー法、サトウキビ、施肥窒素利用率、施肥由来窒素
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背景・ねらい |
奄美地域の重粘土壌は、本土の黒ボク土に比較して、保水力、保肥力が小さい。この土壌で、分布面積の最も多い石灰岩風化土壌(典型普通暗赤色土)は、透水性が良好である。これらのことから、作物に吸収されなかった窒素は、降雨に伴って溶脱し、地下水の水質に影響する。環境への負荷の少ない効率的な施肥技術を構築するためには、現在の施肥体系における施肥窒素の利用率を把握する必要がある。そこで、15Nトレーサー法を利用して、奄美地域の主要品種である`NiF8'における施肥窒素の利用率を明らかにする。
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成果の内容・特徴 |
- サトウキビが吸収した窒素の約80%は、当年に施肥した窒素である(表1)。
- 当年に施肥した窒素の利用率は、春植え栽培で46%、株出し栽培で51%であり、株出し栽培の利用率が高い(表1)。
- 各部位における施肥窒素の利用率を作型間で比べると、鞘頭部は、春植え栽培、葉(含む枯葉)、地下茎は、株出し栽培がやや高い。茎(地上部分)は、ほぼ同等である(表2)。
- 施肥時期別には、春植え栽培では追肥窒素、株出し栽培では基肥窒素の利用率が特に高い(図1)。
- 基肥窒素利用率の作型間の違いは、春植え栽培は、株出し栽培に比べ、基肥を施用してから梅雨までの期間が短く、かつ地上部、地下部の生育量が小さいことに因る(図2、図3)。
- 追肥窒素利用率の作型間の違いは、地上部の繁茂量と機械による培土時の作業効率を考慮して追肥時期が作型間で異なるためである。すなはち、春植え栽培の追肥は、地上部の繁茂量確保と土壌水分の低下を待って、梅雨明け後に施用される場合が多いが、株出し栽培では、地上部が早くから繁茂するために梅雨前に施用される。このように梅雨による溶脱機会の程度が追肥時期で異なるからである(図2、図3)。
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成果の活用面・留意点 |
- 本情報は、効率的な施肥技術構築のための参考資料として活用できる。
- 典型普通暗赤色土壌のサトウキビ6~7年連作ほ場(堆肥無施用)において、奄美地域の主要品種`NiF8'を県施肥基準に準じて栽培し、目標収量が得られた試験での結果である。
- サトウキビほ場において、1.981atom%の標識窒素(硫安)を基肥または追肥に施用し、標識窒素施用株とその周辺に位置する株(ノーマル窒素施用株)が吸収した標識窒素量から求めた結果である。
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図表1 |
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カテゴリ |
肥料
さとうきび
施肥
品種
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