タイトル |
温暖地西部における水稲の「嫌気土中直播」による苗立ち |
担当機関 |
中国農業試験場 |
研究期間 |
1995~1997 |
研究担当者 |
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発行年度 |
1995 |
要約 |
酸素供給剤で種子を被覆しなくても、催芽種子の代掻きをした土壌中への散播により良好な苗立ちが得られるので、生産費の大幅な削減ができる。嫌気土壌中における苗立ちは低温下で低下し、また品種間の差は大きい。
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背景・ねらい |
代掻きをした水田での水稲の直播には、土壌中に播種する「潤土土中播種」と土壌表面に播く「潤土表面播種」がある。前者では種子が酸素不足に陥るのを防ぐため催芽種子を酸素供給剤カルパーで被覆しているが、カルパーと被覆機械の購入及び被覆作業が必要である。後者では種子は土壌表面にあるため酸素は供給されるが苗立ちの不安定さと倒伏が問題である。最近、酸素供給剤を使用しなくても潤土土中播種で安定した苗立ちが得られることが熱帯アジアで解明され、An aerobic seeding(嫌気土中播種)と呼ばれている。嫌気土中播種は代掻き直後に催芽種子を散播もしくは直播機を用いた条播で行われ、酸素供給剤を使用せずに種子勢の高い種子を用いることを除けば潤土土中播種と同じである。そこでこの播種法が日本の温暖地西部でも可能であるかどうかを評価する。
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成果の内容・特徴 |
- 6月中旬(日平均気温23℃)に、品種ヒノヒカリを用いて散播で嫌気土中播種を行ったところ、カルパーを用いた潤土土中播種より劣るが、潤土表面播種よりもよい苗立ちが得られた(図1)。倒伏は潤土表面播種で最も大きく、潤土土中播種で最も小さく、嫌気土中播種ではそれらの中間であった。嫌気土中播種と潤土土中播種とも高い籾収量が得られた。以上の結果は温暖地西部でも嫌気土中播種が可能であることを示唆している。
- 嫌気土中からの苗立ちは温度により大きな影響を受け、低温条件下で低下する(図2)。
- 苗立ち(図2)と鞘葉の出芽するスピード(図3)はインド原産の品種ASD1が最も優れている。低温下では赤米が、高温下ではカルパー被覆種子がASD1と同程度の苗立ちを示す。
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成果の活用面・留意点 |
酸素供給剤や被覆機械の購入と被覆作業を必要とせず、生産費を大幅に節減できる基盤技術であるが、広域に適用するにはさらに種子勢、土壌型及び気象条件に関する研究が必要である。今後適性品種(低温・嫌気土壌耐性)が開発されれば、低温下での苗立ちも安定化でき、早期栽培にも利用できる。
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図表1 |
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図表2 |
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図表3 |
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カテゴリ |
肥料
水田
水稲
播種
品種
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