タイトル |
雄成虫を用いたハスモンヨトウの殺虫剤抵抗性の簡易検定法 |
担当機関 |
農業環境技術研究所 |
研究期間 |
1996~1996 |
研究担当者 |
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発行年度 |
1996 |
要約 |
性フェロモントラップを用いて生け捕りしたハスモンヨトウ雄成虫を供試して、本種の殺虫剤抵抗性の簡易検定法を開発した。
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背景・ねらい |
近年、野菜、花卉等を加害する広食性害虫のハスモンヨトウで、本種の特効薬であるメソミル(カーバメート剤)や各種ピレスロイド剤に対する抵抗性が顕在化している。本種の薬剤感受性検定には、通常幼虫を用るが、本種は発生初期の密度が極めて低いことから幼虫を用いた薬剤感受性検定では広域で季節的な薬剤感受性の変動を把握することは難しい。そこで、発生初期から性フェロモントラップにより容易に捕獲できる雄成虫を用いた薬剤感受性の簡易検定法を確立する。
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成果の内容・特徴 |
- 性フェロモントラップで生け捕りした雄成虫を用いたハスモンヨトウの薬剤抵抗性の簡易検定法(ドライフィルム法)の手順は以下の通りである。
- 1)雄成虫の採集・保管:性フェロモントラップで生け捕りした雄成虫は日の出後、約1.5時間以内に野外から回収する。翅の痛んだ個体や鱗片のとれた個体は除去し、15-20℃で保管し採集当日検定に供試する。
- 2)薬剤の処理:薬剤原体をアセトンで所定の濃度に希釈する。ガラスシャーレ(直径9cm)の蓋と底の両面に薬液各0.5mlを滴下し全面に薬剤の薄膜(ドライフィルム)を作る。
- 3)成虫の処理:雄成虫をシャーレ当たり3-5頭放し、25℃、湿度80%以上の恒温器内に置く。
- 4)生死の判定:24時間後にピンセットで軽く触れて処理虫の生死を確認する。
- 5)結果の判定:各薬剤の判別濃度(感受性個体はすべて死亡するが、抵抗性個体はほとんど死亡しない薬剤濃度)における死亡率の変動で判断する。供試虫が十分得られる場合には、判別濃度前後の薬剤濃度における死亡率を出し、薬液濃度と死亡率の関係から判断する。
- 本簡易検定法確立の基になった主なデータは次の通りである。
- 1)抵抗性雄成虫のメソミル、ペルメトリン(ピレスロイド剤)に対する局所施用法による抵抗性比は、3齢幼虫の抵抗性比に比べてメソミルで特に小さかった(表1)。
- 2)雄成虫のドライフィルム法によるメソミル、ペルメトリンに対する抵抗性比は局所施用法による結果と平行した(表1)。また、ドライフィルム法では局所施用法に比べ、日齢の影響を受けにくかった(図1)。
- 3)雄成虫のドライフィルム法による判別濃度はメソミルで10μg/シャーレ、ペルメトリンで20μg/シャーレであった。
- 本簡易検定法により1992年から5年間、関東以西の7県9カ所で本種の薬剤感受性のモニタリングを行った結果、幼虫を用いた浸漬法等で抵抗性が確認された地域で、判別濃度における死亡率が低く、本法が薬剤抵抗性の検定法として利用できることがわかった(図2)。
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成果の活用面・留意点 |
本法は広域、長期間の薬剤感受性のモニタリングに活用できるが、抵抗性発達の程度や代替薬剤の選定には従来の幼虫を用いた浸漬法等の手法を用いる。
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図表1 |
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図表2 |
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図表3 |
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カテゴリ |
病害虫
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性フェロモン
抵抗性
モニタリング
薬剤
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