タイトル |
わが国の低地土壌における粘土鉱物組成の類型化と地域的特徴 |
担当機関 |
(独)農業環境技術研究所 |
研究期間 |
1993~1996 |
研究担当者 |
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発行年度 |
1996 |
要約 |
わが国の低地土壌の粘土鉱物組成を、緩衝能や物理性により6類型9亜類型に区分し、スメクタイト主体の類型は関東、北陸以北に、イライト質の類型は東海、近畿に、カオリン質の類型は中国、四国に広く分布するなど、粘土鉱物組成の分布の地域的特徴を明らかにした。
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背景・ねらい |
土壌の粘土鉱物組成は、土壌の緩衝能や物理性等に密接に関わっており、国際的な土壌分類でも低次分類の区分基準として鉱物クラスが組み入れられている。しかし、わが国の土壌分類や適性分級では、いまだ区分基準として取り上げられていない。そこで、全国の低地土壌の粘土鉱物組成の分布の地域的特徴を明らかにし、分類や分級に組み入れるための基礎資料を得る。
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成果の内容・特徴 |
- 全国の主要河川約200流域366地点の低地土壌の粘土鉱物組成を、X線回折図におけるピーク面積割合により計量した。これを生産力や環境保全機能に関わる緩衝能や物理性の観点から、6つの類型(9つの亜類型)に区分した(表1)。その区分ではまず膨潤・収縮性の大きいスメクタイトの多い類型Ⅰを分け、次に緩衝能の大きい順に類型Ⅱ>Ⅲ>Ⅳ>Ⅴに分け、非晶質物主体のものを類型Ⅵとした。
- スメクタイト主体の類型Ⅰは北海道から東海にかけて分布し、特にⅠ-Aは東北、北陸および関東だけに分布していた。東海と近畿ではⅡ-BまたはⅣ-Aのイライトの多い類型が広く分布し、中国と四国ではⅣ-BまたはⅤのカオリン鉱物の多い類型が広く分布していた。主に非晶質鉱物からなる類型Ⅵは北海道と九州に比較的広く分布していた(図1)。
- これらの結果は、粘土鉱物種が、地域の土壌生成過程と地質の影響を受けていることを示唆している。また、干拓地の土壌には、一般にスメクタイトが認められるが、東北、北陸、関東の干拓地の土壌はⅠ-Aに属するのに対し、中国や九州地方のそれはⅡ-Aの類型に入り、それほどスメクタイトが多くない。
- 都道府県ごとの結晶性粘土鉱物組成は、北海道、東北、北陸では14Å鉱物が主体の道県が多く、中国、四国、九州では7Å鉱物が主体の県が多かった。また、九州や近畿では、他の地方に比べて10Å鉱物の量比の高い府県が多かった(図2)。
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成果の活用面・留意点 |
この成果は、低次の土壌分類に粘土鉱物組成を組み入れるための類型化の基準を提供するだけでなく、全国あるいは地域レベルでの水田の生産力分級や環境保全機能等の計量に活用できる。
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図表1 |
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図表2 |
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図表3 |
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カテゴリ |
水田
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