タイトル |
ラッカセイ根細胞壁による難溶性リン酸の接触溶解能 |
担当機関 |
農業環境技術研究所 |
研究期間 |
1995~1996 |
研究担当者 |
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発行年度 |
1996 |
要約 |
ラッカセイが持つ難溶性リン酸の吸収能力は、根長や根分泌物、あるいは最低リン酸吸収濃度(Cmin)の要因から説明することはできず、根表面と土壌粒子の接触溶解反応に起因する新しい養分吸収機構によること提案した。
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背景・ねらい |
難溶性リン酸が主体の低リン酸土壌においても、ラッカセイは旺盛な生育を示す作物である。これは、土壌中の鉄型リン酸やアルミニウム型リン酸などの難溶性リン酸を溶解し、吸収利用できる能力が高いからである。植物の難溶性リン酸獲得機構として根長、最低リン酸吸収濃度(Cmin)、根分泌物、等の要因が考えられてきたが、これからラッカセイのリン酸吸収能力を説明できなかった[1,2]。低リン酸土壌においては、土壌溶液中のリン酸濃度はきわめて低いことから、ラッカセイ根表面と土壌粒上の難溶性リン酸が接触的に反応し、リン酸が溶解・吸収される可能性が考えられた。そこで、ラッカセイ細胞壁の難溶性リン酸溶解能について検討した。
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成果の内容・特徴 |
- 低リン酸肥沃土壌で各種作物を栽培した。供試作物のうち、ダイズ、ソルガム、トウモロコシはリン酸欠乏のため生育は極めて不良であったが、ラッカセイは旺盛な生育を示し、リン酸吸収能力が優れていた(表1)。
- ソルガム、ダイズ、ラッカセイ根から細胞壁を分離精製し、難溶性の鉄型リン酸やアルミニウム型リン酸に対する溶解能を比較した。その結果、ラッカセイ根細胞壁は、バリサイトを除く全ての鉱物からリン酸溶解能が最も高かった(表2)。
- 根のCEC(塩基置換容量)が最も高いダイズは、根細胞壁のリン酸鉄溶解能においてラッカセイに劣った。また、根のCECはpH上昇に伴い増大するが、リン酸鉄溶解能は逆に漸減した(図1)。このことから、ラッカセイ根細胞壁の難溶性リン酸溶解能は、CECの主体であるペクチン質等のポリアニオンと鉄・アルミニウムとの交換的な反応に起因するものではないと推察した。
- ラッカセイ根をアルカリ溶液で短時間(30秒)処理しただけで、根細胞壁のリン酸溶解能は大幅(30%以上)に低下した。したがって、溶解活性はラッカセイ根表面に存在することが示唆された(図2)。
- 以上の結果から、ラッカセイは土壌粒子上の難溶性リン酸と根細胞壁表面との接触的な反応によって、リン酸を溶解・吸収するものと推定した。
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成果の活用面・留意点 |
従来、根細胞壁の機能は構造の強化といった物理的な側面からしか捉えられてなかったが、養分吸収という新たな視点が提示された。残された課題として、根細胞壁のリン酸溶解活性部位について、構造解析が必要である。
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図表1 |
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図表2 |
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図表3 |
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図表4 |
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カテゴリ |
肥料
ソルガム
大豆
とうもろこし
らっかせい
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