水稲種子の初期生長の2価鉄による安定化

タイトル 水稲種子の初期生長の2価鉄による安定化
担当機関 中国農業試験場
研究期間 1996~1997
研究担当者
発行年度 1996
要約 湛水土壌中に存在する各種イオンのうちFe++が最も鞘葉とメソコティルの伸長を促進する。この伸長促進作用は、イネ種子が湛水土壌中で苗立ちができることを説明する機構である。
背景・ねらい 水稲の種子は酸素のない湛水土壌中で発芽生長し苗立ちをする(嫌気出芽)。現行の水稲直播においては、催芽種子を酸素の存在する土壌表面に播種したり、酸素供給剤で催芽種子を被覆した後に土壌中に播種しており、嫌気出芽特性は農業上利用されていない。本特性の機構を解明し直播栽培に利用することは、省力・省資材化に寄与する。
湛水土壌中には様々な無機イオンが存在するが、それらのうちで2価鉄Fe++がイネ種子の初期生長を最も促進したので、その詳細を解明する。
成果の内容・特徴
  1. 催芽種子を各種の水溶液に浸漬し初期生長に及ぼす影響を解析したところ、硫酸第1鉄が最も鞘葉とメソコティルの伸長を促進することが判明した(図1)。酸素の存在する条件下でさらに解析したところ、硫酸第1鉄は第1葉の伸長も促進するが、根の伸長には効果がなかった。また種子の初期生長は塩化第1鉄及びクエン酸第1鉄によっても20~40%促進された。以上からFe++が初期生長を促進するが、その程度は共存イオンや種子環境に影響されると推察される。
  2. この伸長促進作用は、試験された10品種のうち9品種で認められた(図2)。促進作用は0.9~9mM(50~500ppm)のFe++で認められた。
  3. 水稲の催芽種子を15時間Fe++に浸漬した後、湛水土壌(0~2g/kgのデンプンを投与)中0~20mmに播種すると、鞘葉と第1葉の生長を促進し出芽率を高めた(図3)。
成果の活用面・留意点 Fe++は湛水土壌中に普遍に存在しており、Fe++による初期生長の促進はイネが湛水土壌中での生長に適応している生理機構であると推察できる。種籾のFe++処理は簡単に低コストでできるので、直播水稲の播種に有益な種子勢の向上技術となりうる。
Fe++はイネの生理学では毒性物質と一般に考えられており、促進の機構や土壌中での生長促進効果についてはさらに詳細な試験が必要である。
図表1 224094-1.gif
図表2 224094-2.gif
図表3 224094-3.gif
カテゴリ 肥料 直播栽培 水稲 低コスト 播種 品種

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