大麦澱粉枝付け酵素を用いた可溶性分岐α-グルカンの合成法

タイトル 大麦澱粉枝付け酵素を用いた可溶性分岐α-グルカンの合成法
担当機関 農業研究センター
研究期間 2000~2000
研究担当者
発行年度 2000
要約 二条大麦(四国裸97号)の胚乳から精製した澱粉枝付け酵素をアミロースに作用させると、グルコース6畳体を最小単位とする転移反応が起こる。この反応特性を利用すれば、溶解性の優れた高分子分岐α-グルカンが合成できる。
背景・ねらい 近年、トウモロコシ、イネおよびコムギなどの穀類の澱粉合成関連酵素の作用特性および遺伝子の構造解析が盛んに行われている。近い将来において、澱粉合成に関する形質転換体の作出がこれまで以上に行われ、澱粉分子の構造改変による品質の改良と新規澱粉素材の開発が加速化するものと予想される。特に澱粉枝付け酵素(SBE)はアミロペクチンの分岐構造の構築に関与する重要な酵素であり、その発現量によって分子構造が変動することが知られている。ここでは、大麦澱粉枝付け酵素による新規澱粉素材の開発方法の一つとして、高分子アミロースの分子構造の改変による可溶性分岐α-グルカンの合成方法を検討し、その合成物の構造特性の解析を目的とする。
成果の内容・特徴
  1. 胚乳組織の澱粉顆粒に存在する2種類の澱粉枝付け酵素のアイソザイム(SBE-IおよびSBE-II)のうち、SBE-Iをカラムクロマトグラフィーによって精製した。アミラーゼフリーの精製酵素(50munits)を0.25%アミロース溶液(林原生物化学研究所製EX-III、分子量10万以上)10mlに添加し、30℃下で作用させ、得られた分岐グルカン溶液を静置(4℃、24時間)すると、反応時間に依存して老化性の低下が認められる。また3時間反応後では完全に溶解性を保持する(図1)。
  2. 本酵素がアミロースを切断かつ転移するグルカンの鎖長は6量体を最小単位とし、低分子量域の側鎖では11~12量体が最も多くなる(図2)。
  3. アミロースは分子間の分岐転移によって、70量体以上の主鎖の減少と短い側鎖の増加が生じ、高分岐化する。それに伴ってヨウ素呈反応による色調と最大の吸収波長(λmax)が青色(576.2nm)から茶色(538.4nm)に変化する(図2)。
成果の活用面・留意点
  1. 本酵素を活用することにより、溶解性が優れ、増粘性および保水性をもつ分岐α-グルカンが合成できる。
  2. 本酵素はウルチ性澱粉の老化の抑制または遅延処理に活用できる。
  3. アミロース分子間の2重らせん構造の形成と酵素の安定性は温度の影響を受けることから、比較的高い温度での反応は避ける。
  4. 大麦澱粉枝付け酵素のアイソザイムであるSBE-IIは、SBE-Iよりも短いグルカン鎖を転移する作用特性を持つことから、SBE-Iと同様に活用できる。
図表1 224346-1.jpg
図表2 224346-2.gif
カテゴリ 大麦 とうもろこし

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