植物由来の黄色色素ケルセチン配糖体の抗変異原性

タイトル 植物由来の黄色色素ケルセチン配糖体の抗変異原性
研究期間 1995~1996
研究担当者 小堀真珠子
新本洋士
津志田藤二郎
発行年度 1995
要約 ケルセチン配糖体には、遺伝子の傷害に伴う突然変異を抑制する作用である抗変異原性が認められる。その配糖体の中では、天然に最も多い3-グルコシドの
背景・ねらい 野菜にはガン予防効果があることが疫学的に証明され、その効果を裏付ける作
用として、野菜の抗変異原性がしばしば取り上げられる。この抗変異原性は、発
ガンの第一段階に位置付けられる遺伝子の傷害に伴い発生する突然変異を防ぐ効
果であり、野菜に存在する植物繊維やビタミンC、ビタミンE等がこの作用を示
す成分として注目されてきた。最近では、これらの成分に加えて、色素成分等と
してなじみのあるフラボノイド類が強い効果を示すものとして取り上げられてい
るが、その化学構造と作用メカニズムに関する研究はまだ乏しい。そこで、天然
に最も多いフラボノイド成分であるケルセチン配糖体を種々調製して、糖の結合
位置と抗変異原作用の関係を解析した。
成果の内容・特徴
  1.  ケルセチンにアセトブロモグルコースを化学的手法によって結合させて。ケ
    ルセチン3-グルコシド、4’-グルコシド、7-グルコシド、3,4’-ジグルコシ
    ド、3.4’,7-トリグルコシドを作製し、試験に用いた( 図1)。さらに、市販のケルセチン配糖体であるルチン、ケルシトリンも供試した 。
  2.  供試した8種の配糖体の中で、ケルセチン及びその配糖体であるケルセチン3
    -グルコシド、ルチン(ケルセチン3-ラムノグルコシド)、ケルシトリン(ケ
    ルセチン3-ラムノシド)には、活性化酵素によって変異原に変換される物質で
    あるTrp P-1に対する強い抗変異原性が認められた( 表1)。
  3.  この抗変異原性は、活性酵素であるS-9を前述のケルセチン配糖体が阻害す
    ることによってもたらされることが明らかになった。
  4.  活性化酵素を必要としない変異原物質であるMNNG(N-メチル-N,-ニトロ -N-ニトロソグアニジン)に対しては、ケルセチン及びケルセチン4’-グルコ
    シドが抗変異原性を示した( 表2 )。ケルセチン4’-グルコシドはあらかじめ活性化したTrp
    P-1に対しても 抗変異原性を示した。
  5.  傷害を受けた遺伝子を修復することも抗変異原性としてとらえられ、これを
    バイオアンチミュータゲニシティーと呼ぶが、ここで用いた8種のケルセチン配
    糖体にはその作用は認められなかった。以上からケルセチン配糖体の抗変異原性
    作用のメカニズムを 図2ように取りまとめた。
成果の活用面・留意点 フラボノイド類の抗変異原性についてはアグリコンでの研究が進んでいる。こ
れは、アグリコンが市販されており、また有機合成も可能であること、腸管で配
糖体はアグリコンに分解されると推定されること等による。しかし、最近フラボ
ノイド類が配糖体のまま吸収され血液に存在することが報告されるようになり、
また、天然のフラボノイド類はほとんどが配糖体であることから、配糖体を用い
た研究成果を蓄積する必要があるので、ケルセチン配糖体以外の配糖体に関する
研究が望まれる。
図表1 224431-1.gif
図表2 224431-2.gif
図表3 224431-3.gif
図表4 224431-4.gif
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