タイトル |
細胞質雄性不稔イタリアンライグラスの生長点由来カルスからの植物体再分化 |
担当機関 |
草地試験場 |
研究期間 |
1994~1994 |
研究担当者 |
|
発行年度 |
1994 |
要約 |
細胞質雄性不稔イタリアンライグラスの生長点を2、4-DとBAPを添加したMS培地で培養してカルスを誘導後、ホルモン無添加のMS培地に移すことにより植物体を再分化させることができた。これらの再分化植物では、雄性不稔性が維持され、しかも草丈、出穂期などの農業上重要な形質について、大きな変異は認められなかった。
|
背景・ねらい |
細胞質雄性不稔イタリアンライグラスとトールフェスクとの属間F1雑種は、トールフェスクより乾物分解率が高く、し好性に優れ有望であることが明らかにされている。しかし現在のところ、イタリアンライグラスには雄性不稔維持系統がないため、雄性不稔個体を大量に作出することが困難であることから、トールフェスクとのF1種子を大量に得ることができない状況にある。そこで組織培養による細胞質雄性不稔イタリアンライグラス増殖について検討した。
|
成果の内容・特徴 |
- ワセアオバ由来の細胞質雄性不稔植物の生長点をカルス形成培地上に置床し、暗黒下、25℃で培養することにより、約1ヶ月で直径が1cm程度のカルスが形成された。それらのカルスを再分化培地に置床するとカルスから植物体が再分化した。
- 7遺伝子型の細胞質雄性不稔イタリアンライグラスから誘導したカルスの大きさと再分化割合は2、4-D濃度が2mg/1と8mg/1の間で有意な差が認められず、再分化割合は両区とも約90%と高率であったので、カルス誘導のための2、4-D濃度は2mg/1で十分である(表1)。
- 細胞質雄性不稔イタリアンライグラスのカルス形成能と再分化能は遺伝子型間差はあるが、一般品種と比較して劣る傾向は認められなかった(表2)。
- カルスからの再分化植物は完全不稔で、雄性不稔性は完全に維持されていた(表3)。
カルスから再分化した植物の出穂日、草丈および茎数は同一遺伝子型由来カルスからの再分化植物間に多少変異は認められたが、変異係数は小さく、材料とした植物の特性はほぼ完全に維持されていた(表3)。
以上のことからイタリアンライグラスの細胞質雄性不稔個体は生長点をカルス誘導培地で培養し、得られたカルスを再分化培地に移して再分化をはかることにより、雄性不稔性を維持しつつ、その他の形質にも大きな変異なく増殖することが可能である。
|
成果の活用面・留意点 |
- 細胞質雄性不稔イタリアンライグラスの一つの増殖法となり得る。
- 今後、培養法の改良などにより増殖率の高い培養法を検討する必要がある。
|
図表1 |
 |
図表2 |
 |
図表3 |
 |
カテゴリ |
イタリアンライグラス
品種
|