タイトル |
採草地による浅層地下水の水質浄化 |
担当機関 |
北海道農業試験場 |
研究期間 |
1994~1995 |
研究担当者 |
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発行年度 |
1995 |
要約 |
難透水層が比較的浅い層に存在し、流下する浅層地下水の牧草による吸収が可能な採草地は水質浄化能を有し、その浄化能は拡散の他に牧草による吸収に支配される。この様な採草地を、土地利用連鎖の中で地下水の下流に配置することにより地下水中の硝酸態窒素濃度の低減が可能である。
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背景・ねらい |
農用地の地下水の水質調査の結果、高濃度の硝酸態窒素が検出される事例がある。この原因として、野外蓄積家畜排泄物、畑地への肥料等が考えられる。このように一旦汚染された地下水自体の浄化に関しては、有効な方策はない。ここでは、地下水中の硝酸態窒素濃度が低く保たれている地目を土地利用連鎖の中に組み込むことによる地下水水質の保全の可能性について検討する。
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成果の内容・特徴 |
- 北海道農業試験場場内の地下水中硝酸態窒素濃度が高い更新草地(直前の5年間は畑地として使用、草地造成時約20kgN/10a施用)と低い採草地(オーチャードグラス主体、更新後7年目草地、調査時は無施肥で管理)が隣接する緩傾斜面に両者を結ぶ調査線Aを設定し(図1イ)、地下2mまでの地下水水質の変動を調査した。なお、この調査線が浅層地下水の移動方向に沿うことをあらかじめ確認した。調査地点の土壌は多湿黒ボク土で、難透水性の月寒粘土層下部が地下約 1.6~2.0 m に、また、構造の発達した透水係数の大きい滞水層(月寒粘土層中部)が難透水層の直上に存在する(図1ロ)。
更新草地で数10mg/Lと高い値を示す硝酸態窒素濃度は採草地に入ると急激に低下し、約100m流入した地点では数mg/Lになる(図2)。この現象は、年間をとおして認められる。
- 採草地の一部を浸透性の除草剤で枯殺すると浄化能は消失し、牧草が吸収していた地力窒素や枯死した植生に由来すると考えられる窒素の溶出が認められ、逆に硝酸態窒素濃度は上昇する(図3)。このことは、草地の浄化能が牧草の存在に大きく依存する事を示している。
- 更新草地から採草地に流入するのに伴い、浅層地下水中の硝酸態窒素濃度の低下率は塩素イオン濃度の低下率を上まわり、植物による吸収が示唆される。また、土壌断面調査によると、地下1.5m付近まで牧草根は伸長する。
- 以上の結果から、流下する浅層地下水の牧草による吸収が可能な草地は水質浄化能を有し、その浄化能は拡散等の他に牧草による吸収に支配される。
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成果の活用面・留意点 |
- 本情報は土地利用連鎖に伴う地下水浄化の研究の参考になる。
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図表1 |
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図表2 |
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図表3 |
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カテゴリ |
肥料
病害虫
除草剤
施肥
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