タイトル |
ライグラスの新病害うどんこ病 |
担当機関 |
草地試験場 |
研究期間 |
1997~1997 |
研究担当者 |
月星隆雄
田中友子(宮崎畜試)
島貫忠幸
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発行年度 |
1997 |
要約 |
わが国で初めてイタリアンライグラスにうどんこ病の発生を確認し、病原菌をBlumeria graminisと同定した。本病菌は接種した12草種の中ではライグラス類に特異的な病原性を示し、ライグラスの本病に対する抵抗性に品種間差異が認められた。
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背景・ねらい |
宮崎県でイタリアンライグラスにわが国では発生未記録のうどんこ病様症状が発生した。本病の発生拡大が懸念されるため、病徴の記載、病原の確定、接種試験による寄生性の分化及び品種抵抗性の確認等を行って、防除方法の策定に役立てることを目的とした。
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成果の内容・特徴 |
- 発生状況および病徴
本病は1996年に宮崎県西諸県郡でイタリアンライグラスに発生した。病徴は4月から7月にかけて、葉身および葉鞘に発生し、初め表面に白色粉状の楕円形の菌叢を形成し、後に拡大して灰白色の菌叢となる。発生後期には病斑は相互に融合して不定形となり、植物体全体にうどんこを振りかけたような状態になる(図1)。激発時には葉先から黄褐色に変色して、株全体が枯死する。
- 病原菌の同定および病名
病原菌の分生子柄は無色で、基部に球根状の膨らみを持つ。分生子は無色、レモン形または楕円形で、大きさは20.4-32.6×8.2-16.3μm(平均26.3×11.7μm)で、分生子柄上に5-10個程度連鎖して形成される(図2)。宿主細胞内には掌状の吸器を形成する。罹病葉上での有性世代の形成は認められない。以上の形態、病原性および典型的なうどんこ病徴を示すことから、本病菌をBlumeria graminis (DC.) E.O.Speer (= Erysiphe graminis DC.)と同定した。また、本病はわが国では初報告であるため、ライグラスのうどんこ病(新病害)とした。
- 宿主範囲と品種抵抗性
12草種に幼苗接種した結果、本病菌はイタリアンライグラスおよびペレニアルライグラスにのみ病原性を示し、他の草種には感染しない(表1)。また、ライグラス類の品種によって感染程度が異なり、圃場でもアキアオバ、エース等の品種は発生が少なく、本病に対する抵抗性に品種間差異が認められる。
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成果の活用面・留意点 |
- イタリアンライグラスのうどんこ病の発生は現在のところ、宮崎県西諸県郡に限られているが、今後の拡大に注意する必要がある。
- 本試験の結果から品種抵抗性の存在が明らかになったため、本病の発生拡大を防ぐ方策として抵抗性スクリーニングをさらに実施する必要がある。
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図表1 |
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図表2 |
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図表3 |
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カテゴリ |
病害虫
イタリアンライグラス
うどんこ病
抵抗性
品種
防除
レモン
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