タイトル |
放牧育成牛の糖および脂質代謝の特性 |
担当機関 |
草地試験場 |
研究期間 |
1997~1997 |
研究担当者 |
山崎敏雄
青木康浩
早坂貴代史(現飼料生産利用部)
中西直人(現中国農試)
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発行年度 |
1997 |
要約 |
放牧育成牛は,発育速度の等しい舎飼育成牛と比較して,グルコース,中性脂肪,遊離脂肪酸,インスリンの血中濃度が異なり,グルコース利用性が高い。その要因として運動量の相違が挙げられる。終牧後肥育すると3週間までにその特性は減弱する。
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背景・ねらい |
放牧育成した肥育素牛は,健康で飼いやすいといわれているものの,取引基準として体重を重視する子牛市場では,体重が全般的に少ないため敬遠されがちである。そのため客観的な放牧効果の解明が,放牧の推進上急務となっている。そこで,放牧期から終牧後肥育期における物質代謝の特性について検討した。
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成果の内容・特徴 |
- 補助飼料無給与の放牧育成牛における諸代謝産物とインスリンの血中濃度を,発育速度の等しい舎飼育成牛(乾草・不断給与,市販配合飼料・体重比1%量/日)を対照として調べた。放牧牛では舎飼牛に比べ,グルコースおよび中性脂肪濃度が高く,遊離脂肪酸およびインスリン濃度が低い(表1)。この状態は,エネルギー基質を体組織へ円滑に供給できるように適応した結果であると考えられる。
- 育成末期から肥育開始後半年にわたり各種代謝産物とインスリンの血中濃度を調べた。放牧育成牛のグルコースやインスリン濃度は肥育開始後3~4週まで著しく変化し,肥育8週以降は舎飼育成牛と差が認められなくなる(図1)。
- 飼料の利用効率と関係すると考えられている血中投与グルコースの利用性は,育成終了時には放牧育成牛の方が高い(図2a)。しかし,その特性は肥育開始後3週までに大きく減弱すると考えられる(図2b)。
- 放牧牛の特性に関与する可能性のある要因のうち,軽度ながら長期にわたる運動の影響は,運動の反復によってグルコース利用性が向上する(図3)。このことから,放牧期から終牧後肥育期における生理特性に,運動量の変化が関与すると推察される。
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成果の活用面・留意点 |
- 放牧育成の利点に関する知見が得られたことで,公共牧場の利用拡大など,放牧利用推進につながることが期待される。
- 終牧後における生理機能の変化の様相は,終牧後の給餌法に影響を受けると考えられ,最適な終牧後肥育法を策定するためにさらに検討を要する。
放牧における運動の利点が発揮されるための諸条件(エネルギー充足率,気象環境など)を解明する必要がある。
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図表1 |
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図表2 |
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図表3 |
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図表4 |
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カテゴリ |
肉牛
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