タイトル |
シバ類葉腐病菌( Rhizoctonia solani )の菌系の類別とその病原性 |
担当機関 |
草地試験場 |
研究期間 |
1998~1998 |
研究担当者 |
月星隆雄(農環研)
古賀博則(石川県農短大)
植松勉(農環研)
島貫忠幸
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発行年度 |
1998 |
要約 |
ベントグラス,ブルーグラスなどシバ類葉腐病菌( Rhizoctonia solani )の菌糸融合群および培養型による類別を行った。病原菌を芝地に埋め込み接種した結果,いずれの菌株は強い病原性を示したが、類別群により異なるタイプの病斑型を形成した。
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背景・ねらい |
ベントグラス,ブルーグラスなどシバ類葉腐病(ブラウンパッチ)は芝地等で重要な病害であるが,病原菌( Rhizoctonia solani Kuhn )の菌糸融合群および培養型は必ずしも明らかではない。そこで北日本で収集したシバ類葉腐病菌について類別を行い,新たに確立した埋め込み接種法により芝地に接種し,病原性を検討する。
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成果の内容・特徴 |
- シバ類葉腐病菌の菌糸融合群および培養型
1990年から1995年にかけて北海道,宮城,山形,福島,栃木の各県の芝地等で採集した葉腐病菌を菌糸融合および培養型により類別した結果,ベントグラス,ブルーグラス等からの分離菌はAG1(菌糸融合群)-ⅠA(培養型), AG1-ⅠB, AG2-2-ⅢBと類別された(表1)。AG1-ⅠA,ⅠB菌は牧草葉腐病菌であり,シバ類葉腐病菌としても発生することが明らかになった。分離される菌群と採集地には特徴的な関係はなかったが,採集時期および生育適温からⅠA,ⅢB菌は気温の高い7月以降に,ⅠB菌は気温の低い6月から発生すると考えられる。
- 埋め込み接種法(図1)
接種源の調製:20分間煮沸した大麦粒(殺菌剤粉衣無し)を三角フラスコに詰め,オートクレーブする。PDAで前培養した菌を植菌し,25℃,2週間,暗黒下で時々振り混ぜながら培養する。 接種法:芝地にハンマーで穴をあけ,接種源(麦粒培養菌)を穴一杯に埋め込む。接種部を透 明プラスチックカップで覆い,つまようじで留めて湿度を保つ。2日後にカップを取り,3~4日から2週間の間に発病調査を行う。
- 葉腐病菌の類別群による病原性とその病斑型差異
埋め込み接種法でベントグラス芝地に葉腐病菌を接種した結果,いずれの菌群も強い病原性を示した。病斑型はAG2-2-ⅢB菌が褐色の円形パッチを形成し,典型的なブラウンパッチ症状を示したが,AG1-ⅠA菌は中央部灰白色の円形パッチを,AG1-ⅠB菌は中央部灰褐色の不整形病斑を形成した(図2)。従って,葉腐病菌は類別群により病斑型が異なることが明らかとなった。
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成果の活用面・留意点 |
- シバ類葉腐病菌の類別群およびその病斑型を明らかにしたことにより,どの菌群が葉腐病に関与しているかの診断に有効である。また,この方法は Sclerotinia homoeocarpa によるダラースポット病や Pythium spp.によるピシウム病などの芝草土壌病害の接種および病徴再現にも有効である。
- 各菌群は生育適温や生態の差などから異なった地理的分布をすると考えられるため,さらに西日本など暖地の芝草から採集し、類別を行う必要がある。
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図表1 |
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図表2 |
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図表3 |
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カテゴリ |
大麦
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