タイトル |
養分の蓄積した傾斜放牧草地における施肥管理 |
担当機関 |
草地試験場 |
研究期間 |
1998~1998 |
研究担当者 |
山田大吾
山本 博
小島 誠
渡辺治郎
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発行年度 |
1998 |
要約 |
傾斜放牧草地では、家畜ふん尿によって傾斜の緩やかな尾根部や谷部に養分蓄積が起こる。これらの区域では、無施肥管理による収量低下が小さいことから施肥を減らすことが可能である。
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背景・ねらい |
我が国の多くの草地が山地傾斜地に立地している。このような山地傾斜地に立地する放牧地の特徴として複雑地形が家畜の行動を規制し、排泄されるふん尿に分布に偏りを生じさせるため、経年化によって地形条件による土壌養分の偏在を生み、同一草地内において牧草生産力が異なっている。そこで、草地を地形の凹凸や傾斜で区分し、ふん尿の還元に伴う土壌養分の蓄積区域の施肥を低減させることによって、施肥管理の省力化をおこなう。
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成果の内容・特徴 |
- 傾斜放牧草地における土壌中の養分濃度は、緩傾斜の尾根部や谷部で高く、土壌診断基準と比べて多量の養分が蓄積している(図1)。この養分分布を基にして、傾斜放牧地を凹地(7.1%)と凸地に大別し、凸地についてはさらに傾斜角度で13度以下(50.4%)、13~16度(24.8%)、16度以上(17.7%)に区分できる(図2)。( )内は面積割合を表す。
- 無施肥の状態では16度以上の急斜面では、2年目以降著しい収量低下が見られるのに対して、凹地や13度以下の緩斜面では収量の低下はほとんど見られない(図3)。
- 牧草乾物収量に対する施肥の影響は、土壌養分の蓄積の少ない急斜面ほど大きく(図4)、急斜面では継続的な施肥が必要と判断される。
- 草地の区分ごとに施肥管理を想定して乾物収量を試算すると、全区に対して均一に施肥する場合では約620 kg/10a、無施肥では約450 kg/10aとなる。これに対して全体57.4%を占める凹地(7.1%)および13度以下の緩斜面(50.3%)を無施肥にすると想定される収量は約540 kg/10aとなり、均一施肥に比べてやや減収となるが肥料や労力の削減につながり、放牧草地の地形、養分蓄積に対応した施肥管理が可能である。
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成果の活用面・留意点 |
- 傾斜放牧地での地形要因に対応した合理的な施肥管理に利用できる。
- 傾斜草地への適用にあたっては、尾根、急斜面など地形の特徴的な部分について土壌診断を行い、概略を把握する必要がある。(図1)のような養分蓄積の場合は、緩斜面に対して少なくとも3年間の無施肥管理ができる。また保全的管理に関してはさらに検討の必要がある。
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図表1 |
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図表2 |
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図表3 |
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図表4 |
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カテゴリ |
肥料
傾斜地
省力化
施肥
土壌診断
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