タイトル |
殺虫剤の牛個体選択塗布によるノサシバエ防除技術 |
担当機関 |
東北農試 |
研究期間 |
1998~2002 |
研究担当者 |
白石昭彦
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発行年度 |
1998 |
要約 |
牛のノサシバエに対する誘引性は年齢、性別により差があり、牛群中の誘引性の高い牛に選択的に薬剤を塗布することにより、糞分解者としての役割を持つノイエバエの個体数を大きく低下させることなくノサシバエだけを防除することができる。
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背景・ねらい |
ピレスロイド系殺虫剤のプアオン法やイヤータッグによる防除を続けた結果、牛体へ寄生するハエ類がほぼ完全に防除された例が知られている。しかし糞虫相の貧弱な地方ではハエ類は主要な糞分解者であるため、ハエ類がいなくなった結果、糞の分解が遅れる事態が起きている。このような地域で非刺咬性のハエ類を残しながらノサシバエの個体数を減少させ、また薬剤費用低減を図る薬剤施用技術の開発が求められている。
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成果の内容・特徴 |
- 牛群内(日本短角種)において、ノサシバエは若齢よりも高齢の牛へ多く付着する傾向が認められ(図1)、また性別による比較では雌よりも去勢雄に多く付着した。年齢、性別構成が均一な群においても牛個体間にノサシバエ付着数の差が見られる場合があった。付着数の差はノサシバエに対する牛の誘引性の違いによると考えられた。
- 牛群内のノサシバエの密度が低い場合には誘引性の高い牛に集中したが、密度が高くなると、牛同士が体を接触させる頻度が高まり、接触時に牛体から飛び立ったノサシバエが誘引性の低い牛にも付着するため分布の偏りが減少した(図2)。
- 繁殖雌牛(日本短角種)9頭の群において誘引性の高い3頭に対してフルメトリン1%製剤を40mlを背中線に沿って頭から尾の付け根まで塗布した場合、殺虫剤塗布を行った牛にノサシバエが強く誘引されるため、1ヶ月にわたって群全体のノサシバエ個体数を低く維持できた(図3a)。ノイエバエの付着数は塗布直後、牛群全体で減少したが約1週間で回復した(図3b)。誘引性の低い牛に塗布した場合は、薬剤を塗布した牛への付着数は少ないままであったが、塗布しなかった牛への付着数は数日で増加した(図4)。
- 以上より、牛群の中でノサシバエに対する誘引性の高い牛を選択して月に1度、殺虫剤を塗布することにより、ノイエバエの個体数を大きく減少させることなく、ノサシバエ個体数を低く維持することができる。
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成果の活用面・留意点 |
- ノサシバエ防除の費用を低減したい場合や、糞虫相が貧弱な牧野で糞の分解を遅延させたくない場合に有効である。
- 誘引性の高い牛の選定は、年齢、性別の条件及びノサシバエ低密度時の牛体に付着したノサシバエ個体数の見取りによって行う。
- この方法ではマダニの防除は行えないため、小型ピロプラズマ病が問題となっている牧野では、殺原虫剤の使用等別途小型ピロプラズマ病対策が必要である。
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図表1 |
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図表2 |
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図表3 |
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図表4 |
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図表5 |
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カテゴリ |
病害虫
施用技術
繁殖性改善
防除
薬剤
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