急性期反応蛋白による牛呼吸器病の早期診断技術

タイトル 急性期反応蛋白による牛呼吸器病の早期診断技術
担当機関 草地試験場
研究期間 1999~1999
研究担当者 仮屋喜弘
石崎 宏
花房泰子
田村啓二(細菌科学研究所)
大橋 傳(家畜衛試)
成田 實(家畜衛試)
高橋秀之(家畜衛試)
江口正志(家畜衛試)
宮崎 茂(家畜衛試)
発行年度 1999
要約 急性期反応蛋白のひとつであるハプトグロビン及びα1酸性糖蛋白は臨床的に呼吸器と診断される前から血液中に増加することから,牛呼吸器病の早期診断に利用できる。
背景・ねらい 子牛の肺炎等の呼吸器病による経済的損失は極めて大きい。この被害を少なくするためには早期診断・早期治療が有効である。そこで,炎症の初期に血液中に増加するハプトグロビン(Hp)及びα1酸性糖蛋白(α1AG)等の急性期反応蛋白による牛呼吸器病早期診断法の開発を計る。
成果の内容・特徴
    哺育センターにおいて育成されている哺育牛61頭(調査開始時で36~79日齢)について5週間にわたり毎週採血し,呼吸器病の病態と血液中の急性期反応蛋白等との関連性を比較検討した。呼吸器病発症の判定は当該哺育センターで通常行われている鼻漏,元気・食欲減退,発咳等による診断基準に基づいた。調査期間中に14頭が呼吸器病の症状を示し,3頭が発症後2日以内に死亡した。死亡牛も含めた発症牛の内6頭については死亡当日および発症の2週間後に病理解剖を行った。その結果,いずれの牛も明らかな肺炎病巣がみられた他は肉眼的な異常はなかった。本調査により以下の知見が得られた。
  1. 血清中のHpおよびα1AG濃度は呼吸器病と判定される数日前には増加する(図1~図2)。とくにHpは鋭敏で健康時の10~100倍にもなる(図1)。
  2. 症後数日で呼吸器病の症状が緩和した例ではHpも回復し,呼吸器病症状が長期化した例ではその回復も遅れるなど呼吸器病の病勢を反映する。
  3. α1AGも呼吸器病の病勢を反映するが,Hpと比べて呼吸器病の症状が緩和した後の回復は遅い傾向がある(図2)。
  4. 直腸温も呼吸器病と判定される前から上昇する(図3)。直腸温は暑熱環境時や捕獲・保定時に牛が興奮すると呼吸器病と無関係に上昇するが,診断に際しては有効な情報である。
  5. 以上のように血中Hp及びα1AGは明らかな呼吸器病の症状が見られる前から血液中に増加し,治癒に伴って血液中の濃度も回復することが明らかとなり,牛呼吸器病の早期診断および病勢判 定方法のひとつとして利用可能と考えられる。
成果の活用面・留意点
  1. 牛ハプトグロビンは1滴の血液を用いて5分以内で測定できる簡易法が開発されたので,呼吸器病の早期診断や病勢判定,さらには牛の健康チェック等の野外応用が期待される。
  2. 血中Hpやα1AGの変化は呼吸器病に特異的ではないが,直腸温や臨床所見等と併せて検討すれば,より早期で確実な診断が可能となる。
図表1 225008-1.jpg
図表2 225008-2.jpg
図表3 225008-3.jpg
カテゴリ 診断技術

こんにちは!お手伝いします。

メッセージを送信する

こんにちは!お手伝いします。

リサちゃんに問い合わせる