タイトル |
傾斜地放牧が育成牛の筋肉性状に及ぼす効果 |
担当機関 |
草地試験場 |
研究期間 |
2000~2000 |
研究担当者 |
(寺田隆慶)
木戸恭子
林義朗
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発行年度 |
2000 |
要約 |
傾斜地における放牧育成牛は等高線沿いに歩行する傾向が強く,斜面の緩急による運動量の増加は少ない.しかし舎飼牛と比較すると胸最長筋浅部,大腿直筋,半膜様筋で好気的代謝が盛んなⅠ型筋線維が増加する.
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背景・ねらい |
放牧が肉用種育成牛に及ぼす影響として,これまではエネルギーの損失など負の面が多く指摘されてきたが,中山間地の利用を推進する上からも,高標高・傾斜地放牧がもたらす家畜の運動生理活性の変化を把握し,積極的に生産に利用することが望まれる.そこで,傾斜放牧地および牛舎における育成牛の運動量を調査するとともに,筋細胞内酵素活性に基づいた筋線維型割合に及ぼす影響を明らかにする.
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成果の内容・特徴 |
- 11ヶ月齢の去勢育成牛を隣接する草地(急傾斜区:8.9~22.0度,緩傾斜区:4.6~11.3度)および舎飼いで飼養し,運動量を調査した.急傾斜区では等高線沿いを歩行する傾向が強く,1日当たりの歩行距離および垂直移動距離ともに急傾斜区と緩傾斜区で差が無かった(表1).両傾斜区の筋肉性状にも差が無かった.
- 放牧6ヶ月後の筋肉性状について放牧区(急傾斜区と緩傾斜区)を舎飼区と比較すると,収縮に持久力のあるⅠ型筋線維が胸最長筋の浅部,大腿直筋および半膜様筋で増加する傾向にあった(図1).また,後肢の半膜様筋および腓腹筋にはⅡ型筋線維注)からⅠ型へ移行中の中間型筋線維が多く見られた.Ⅰ型筋線維(赤色筋線維)は酸化的リン酸化により,Ⅱ型筋線維(白色筋線維)は解糖系によりエネルギーを獲得する.
- 放牧区では舎飼区に比べ,姿勢保持に関与する胸および腰最長筋の筋線維径が大きい傾向があった.後肢(大腿直筋,半膜様筋,腓腹筋)では,収縮が速く運動に関わる筋線維を中心に径が増大する傾向があった(図1).
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成果の活用面・留意点 |
- Ⅰ型筋線維を多く含む筋肉は肥育過程で脂肪を蓄積する能力が高いことが知られており,放牧育成牛の肥育素牛としての評価に利用できる.
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カテゴリ |
傾斜地
中山間地域
肉牛
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