タイトル |
多雪地すべり地帯における耕作放棄棚田の法面崩壊と土地再利用への試案 |
担当機関 |
(独)農業環境技術研究所 |
研究期間 |
1993~1995 |
研究担当者 |
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発行年度 |
1994 |
要約 |
勾配15度以上の急斜面上の棚田法面は不安定で、耕作放棄後も徐々に崩壊が進むので、土地再活用に際しては法面勾配を緩和して緩斜面部を活用すること、また、緩傾斜で水源などの条件の良い崩積面等では圃場整理を進め水田を維持することなど、棚田地帯の地形・土壌特性に基づく環境保全的土地利用への基礎的資料を得た。
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キーワード |
急斜面、棚田法面、耕作放棄、土地再活用、崩積面、圃場整理、地形・土壌特性
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背景・ねらい |
多雪棚田地帯では耕作放棄田が急増しているが、法面崩壊が放置され、旧田面は放棄後十数年以上経過しても、木本類が定着せずヨシ・ススキが密生するなど荒廃景観を呈しており、国土の保全と景観管理に懸念を生じている。ここでは、第三紀泥岩相丘陵における多雪地すべり棚田地帯の土壌・地形特性、および放棄が直接的誘因となる法面崩壊状況を明らかにし、棚田地帯の環境保全的土地利用への基礎的資料を得た。
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成果の内容・特徴 |
- 第三紀丘陵地の棚田は、地形的に台地頂面、凸型斜面、地すべり滑落面、凹型崩積斜面、谷底面に区分され、前三者は水源に不足し急傾斜でアクセスが困難など耕作放棄され易く、後二者は緩傾斜でグライ土壌が主体で水源に比較的恵まれていた(図1)。
- 棚田土盛り法面では、耕作放棄後、木本類が定着してその安定性は耕作時の草生法面より増大するが、平均勾配40度以上、落差数m以上の法面は不安定であり(図2)、中でも下半切土部が勾配50度以上の法面では表面崩落から崩壊へと進む傾向にあった(図1)。
- 勾配・落差ともに大きい法面は、原地形勾配が15度以上の急斜面の棚田に多かった。また、林床に落葉層が集積せず地表が露出し崩落が進む限界勾配は55度付近であった。
- 以上から、勾配15度以上の急斜面上の放棄田では、法面勾配を緩和しその斜面部を永年作物栽培や植林の場とする利用管理が、また、緩傾斜で水源に恵まれた崩積斜面等では基盤整備等による水田機能の維持が環境保全的に望ましいと考えられた(表1)。
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成果の活用面・留意点 |
- この成果は棚田の斜面保全機能評価、ならびに保全的再利用計画に活用される。
- 本侵食は放棄後当初に大きいが、それ以降は植生繁茂により安定化すると推定される。
- 本調査は裏日本・第三紀泥岩相丘陵地帯におけるものであり、他地域への適用についてはさらに検討を要する。
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図表1 |
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図表2 |
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図表3 |
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カテゴリ |
水田
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