タイトル |
水生昆虫コガタシマトビケラの殺虫剤抵抗性の検出とそのメカニズム |
担当機関 |
農業環境技術研究所 |
研究期間 |
1992~1994 |
研究担当者 |
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発行年度 |
1994 |
要約 |
農薬流入河川に生息するコガタシマトビケラの有機リン殺虫剤に対する感受性は、農薬非流入河川に生息する同種の個体群に比べて著しく低いことと、その抵抗性のメカニズムが薬物結合性蛋白による有機リン殺虫剤の解毒であることを明らかにした。
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キーワード |
農薬流入河川、コガタシマトビケラ、有機リン殺虫剤、抵抗性、薬物結合性蛋白
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背景・ねらい |
水生昆虫の種類及び個体数の増減は、河川の「自然度」を判定するための「環境指標」になっているが、最近、一部の水生昆虫に殺虫剤抵抗性が発達していることがわかり、水生昆虫の種類数及び個体数の増減が必ずしも河川の農薬汚染度に対応していないことが指摘されている。本研究ではわが国の代表的な水生昆虫であるコガタシマトビケラ(図1)の殺虫剤感受性の程度と抵抗性メカニズムを明らかにし、農薬に汚染された河川における水生昆虫の動態を解明するための基礎資料を得ようとした。
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成果の内容・特徴 |
- 農薬流入河川である山形県高畠町砂川、茨城県水海道小貝川、東京都東大和市玉川上水で採集したコガタシマトビケラ3系統の4齢幼虫は、農薬非流入河川である横浜市瀬上川で採集した系統に比べて、MEP(フェニトロチオン)に対するLC50値がそれぞれ、216倍、254倍、65倍であった(表1)。
- 有機リン殺虫剤の標的酵素であるアセチルコリンエステラーゼ(AChE)に対するMEPの生体内毒物活性体MEPO(フェニトロオクソン)の阻害度I50値には、系統間に明瞭な差は認められなかった(表2)。
- 全幼虫体のホモジネートのMEPO分解活性を調べた結果、加水分解については4系統ともにその活性が低くまた系統間で差が見られなかったが、MEP抵抗性にほぼ比例したMEPO結合活性(薬物結合蛋白)の明瞭な差が認められた(図2)。この結果、農薬流入河川に生息するコガタシマトビケラは、MEPO結合性蛋白質の働きにより、MEPに対し抵抗性を示すことが示唆された。
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成果の活用面・留意点 |
水生昆虫にも、殺虫剤解毒メカニズムに基づく殺虫剤抵抗性現象が確認されたことで、(1)河川の「自然度」の判定にあたってはこうした現象を考慮すること、(2)汚染程度の判定には化学分析の併用が望ましいことが明らかになった。
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図表1 |
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図表2 |
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図表3 |
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図表4 |
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図表5 |
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図表6 |
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図表7 |
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図表8 |
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カテゴリ |
病害虫
抵抗性
農薬
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