タイトル |
地理情報を利用した土壌類型別保水容量に基づく流出モデル |
担当機関 |
(独)農業環境技術研究所 |
研究期間 |
1991~1993 |
研究担当者 |
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発行年度 |
1994 |
要約 |
小流域における水保全機能を評価するために、保水容量と孔隙特性に基づいた土壌類型、降雨遮断と蒸発散特性に基づいた土地利用類型を設定し、これらと地形等のメッシュ地理情報を利用した流出モデルを開発した。
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背景・ねらい |
農林地は水の流出調節や涵養といった水保全機能を有している。これらは孔隙中に降水を貯留し、徐々に流出、蒸発散させるという土壌の特性による。この機能を定量的に評価し、水保全のための土地利用計画を策定するために土壌、土地利用の変化に対応したシミュレーションが可能な流出モデルを地理情報を利用して開発した。
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成果の内容・特徴 |
- メッシュセル(25m×25m)を単位とした水の移動の計算から、流域内の任意の小集水域の流出水量、貯留水量等を日単位に推定する流出モデルを開発した。図1、図2はセル内およびセル間の水の移動モデルである。
- 計算に必要な流域の地理情報は土壌類型、土地利用類型、標高、傾斜方向、流出次数、河川位置、道路類型、灌漑水量、日降水量である。
- 保水容量は土層深と土壌型を組み合わせた土壌類型別に非毛管粗孔隙(pF0-1.7)と毛管粗孔隙(pF1.7-2.7)の総和から求めた。
- 土壌からの浸出量は、地下水逓減式Q=Q0exp(-αt)により日単位に推定した。Q0は初期浸出量、αは逓減係数で地下水位の観測結果から土壌類型ごとの値を推定した。
- 蒸発散量は降雨の遮断蒸発と地面、植物からの蒸発散に分け、それぞれの日蒸発散量の基準値を土地利用類型ごとに設定し、これに標高、傾斜方位の係数をかけて補正した。
- 試験流域(約18km2)において1年間の日降水量からこの流出モデルを適用して水移動の計算を行なった。その中から1991年2月14日に土壌中に貯留されている水量(pF1.7-2.7相当)の分布(図3)と台地の畑・果樹園を宅地化した場合の同じ日の貯留水量の変化(図4)を示した。その結果、宅地化された地域で貯水量が減少し、流域の総貯留水量も26,000m3減少し、流出量が186m3/日減少することが予測された。
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成果の活用面・留意点 |
- この手法は土地利用や土壌の変化に対応して、流域内における流出量、貯留水量の変化を推定することができるため、土地利用計画の立案等に有効である。
- このモデルは複数の土壌型や土地利用型が存在する小流域を対象とする。ただし、土壌からの浸出に対する河川の影響や河川内の貯留はモデルに組み込まれていない。
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図表1 |
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図表2 |
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図表3 |
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図表4 |
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図表5 |
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図表6 |
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図表7 |
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図表8 |
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カテゴリ |
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