タイトル |
農業用ポリオレフィン系フィルム(PO)ハウスの微気象特性 |
担当機関 |
農業環境技術研究所 |
研究期間 |
1996~1996 |
研究担当者 |
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発行年度 |
1996 |
要約 |
新しいPOフィルムを被覆した実用規模ハウスの内部微気象特性を把握し,被覆資材の特性による微気象形成メカニズムを解析した。その結果,フィルムの日射透過率と流滴機能の経年劣化が温湿度環境に影響することを確めた。
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背景・ねらい |
耐久性に優れ焼却処理時の有害ガス発生のないハウス被覆資材(農業用ポリオレフィン系フィルム:PO)が普及しつつある。フィルム張替え作業の省力化,廃棄フィルム量の低減など,環境負荷の少ない優れた資材であるが,この被覆資材を用いたハウスの微気象特性や制御環境に関する知見は少ない。ハウス内微気象特性と微気象形成メカニズムを解明することが研究目的である。
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成果の内容・特徴 |
- POと農業用塩化ビニル(農ビ)を被覆した実用規模ハウスを用いて,フィルムの日射透過率の経年変化を比較測定した。塵埃を除去した状態での日射透過率は,3年経過でPOが89%から79%へ,農ビが89%から72%へ低下し,POの経年劣化が少なかった。晴天日持続後でフィルム面に塵埃が付着した状態の日射透過率は3年経過で,POが72%,農ビが53%であった。
- 日中密閉状態のハウス内で濾紙に補足された水分量(浮遊水分量)は,フィルム面に付着する水滴量と比例関係があった。流滴機能のあるPOは農ビより浮遊水分量が平均25%少なく(図1),相対湿度も低かった。
- ハウスの換気率は,外の風速が4.8m/sの時POが1.49~1.93m3/(m2h),バンド固定の農ビが0.034m3/(m2h)であった。ハウスの換気率はフィルムの密着性により異なり,流滴機能に優れるフィルムの換気率が高かった。このため,ハウス内のCO2濃度は,換気率の小さい農ビで夜間と日中との濃度差が増大し,日中は150ppm程度まで低下した(図2)。密閉状態ではCO2不足による作物生育への影響が考えられた。
- ハウス内日射量はフィルム面に付着する水滴により,100μm水膜厚さ当り11%低下した(図3)。フィルム面に水滴が300μm付着した状態と無付着とのハウス内外気温差は,熱収支モデル計算では,屋外日射量700W/m2の場合に約10℃,200W/m2の場合に約3℃となり(図4)実測値と合致した。ハウス天井面の結露水量はフィルムの流滴機能により変化し,流滴機能も経年劣化した。
- 耐用年数の長いフィルムでは,日射透過率の経年変化のみならず,流滴機能の経年変化がフィルム付着水量を変化させ,換気率やハウス内外気温差に影響した。流滴機能はハウスの熱環境制御に大きく影響する要素であることが確められた。
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成果の活用面・留意点 |
流滴機能の経年変化がフィルムの評価の指標となりうる。特性を生かした適用方法,特に多重被覆への適用ではフィルムの組み合わせが重要。フィルムの改良品や新製品についても同様の試験を行い最新の情報を利用する必要がある。
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図表1 |
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図表2 |
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図表3 |
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図表4 |
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カテゴリ |
環境制御
経年劣化
省力化
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