タイトル |
放射化分析による土壌中レアメタル類の非破壊多元素同時定量法 |
担当機関 |
農業環境技術研究所 |
研究期間 |
1996~1997 |
研究担当者 |
|
発行年度 |
1996 |
要約 |
土壌および環境中におけるレアメタル類の動態を把握するために,非破壊で多元素同時計測可能な放射化分析法の測定条件を確立した。中性子20分照射,1週間および2週間冷却後の2回γ線を2000秒測定する方法で,土壌中の16のレアメタル類の同時分析が可能になった。
|
背景・ねらい |
レアメタル類には風化残留性の高い元素や酸化還元の指標となる元素があり,風化の指標,火山灰の同定,地形-水分条件や酸化還元など土壌生成環境の履歴を探るキーとして使える可能性がある。また,レアメタル類はハイテク産業などで需要が多く環境中に放出される懸念があり,環境保全の面からも分布特性の把握は重要である。しかし,測定法が十分確立されておらず,土壌生成過程および環境中での動態はほとんど把握されていない。そこで,非破壊(酸分解せずに微粉砕試料を用いる)で精度良く土壌中レアメタル類を測定できる放射化分析による多元素同時定量法を確立しようとした。
|
成果の内容・特徴 |
- 元素含有量が既知の土壌および岩石標準試料10種類(SO-1, BCR-1,G-2など)を微粉砕後,100 mgをポリエチレン袋に封入し,日本原子力研究所東海研究所の原子炉において中性子照射を20分間行い放射化した。1週間,2週間,4週間および3ヶ月冷却後,遮蔽体付きのGe検出器で約2000秒γ線を測定した。
- 新しくγ線波高分析器とγ線スペクトルデータ解析ソフトを導入したことで,分析精度が向上し,データ処理時間が短縮された。解析ソフトは以下の機能・特徴を持つ。
- 設定条件に適合するピークを自動的に検出して,カウント数を計算する。
- γ線用のライブラリと照合し,ピークの同定を行う。
- 非線形最小2乗法にフィッティングし,重なり合うピークの解析や妨害ピークの除去が簡単に出来る(図1)。
- 元素含量とピーク面積の相関係数(図2),妨害ピークの有無などから最適なピーク・エネルギーや冷却期間など解析条件を決定した。その結果,1週間と2週間冷却後の2回のγ線測定で,Sc,Cr,Co,As,Rb,Sb,Ba,La,Ce,Nd,Sm,Eu,Yb,Lu,Hf,Taの16のレアメタル類が定量可能であった(表1)。
|
成果の活用面・留意点 |
- 植物体も1000mgを灰化し冷却期間を短くすると土壌とほぼ同じ条件で測定可能である。
- ICP-Massなどレアメタルを高精度で測定出来る分析機器が急速に進歩しているが,放射化分析法はそれに比べ非破壊分析というメリットを持ち,また確度も高い。これらの機器と相補的に利用できる。
|
図表1 |
|
図表2 |
|
図表3 |
|
カテゴリ |
|