タイトル |
中空糸を用いた畑水分条件での土壌溶液中の無機養分計測法 |
担当機関 |
農業環境技術研究所 |
研究期間 |
1996~1996 |
研究担当者 |
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発行年度 |
1996 |
要約 |
畑水分条件の土壌溶液中の無機イオン濃度を中空糸を用いて,土層を乱すことなく計測する手法を黒ボク土で検討し,体積水分率が約37%(含水比 約59%)以上であれば本法により土壌溶液濃度が定量できることが明らかになった。
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背景・ねらい |
適切な肥培管理は,作物の好適生産環境を確保すると同時に,環境に対する負荷を低減させる上でも重要であり,特に環境負荷要因の多い畑地におけるする養分管理技術の開発が求められている。そこで,このような養分管理技術の開発を可能にする基盤研究の一環として,水や無機イオンを透過させる性質を有する中空糸を用いて畑水分条件における土壌溶液中の無機成分を土層を乱すことなく計測する手法の開発を検討した。
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成果の内容・特徴 |
- 中空糸を土壌水分条件と施肥レベルの異なる黒ボク土中に埋設し,中空糸内に脱イオン水を流速0.03ml min-1で連続通水させ,通水液を経時的に1mlずつ採水し無機イオンの定量を行った。
- 通水液が中空糸から出てきてからの時間と通水液中のイオンの採取効率*との関係を異なる土壌水分条件下(体積水分率(83%,37%,31%,26%))でみると,いずれの条件下でも通水開始直後で最も高く,通水時間の経過とともに漸減し,約120分後には一定の値に収束した(図2)。
- 通水液が出てきてから5分経った時点から35分までの硝酸イオンの採取効率は,主とし土壌水分率に依存し,体積水分率が83%条件では100%の採取効率であったが,体積水分率37%では77%,31%では43%と採取効率が低下し,26%ではわずか11%であり,測定のバラツキも大きくなりイオンの定量は困難であった(図2)。
- 土壌水分率が一定の場合のイオン濃度は,土壌溶液濃度にほぼ比例する関係にあった。また,イオン種間で採取効率に有意な差があることが認められた(図3)。
- 以上のことから,体積水分率がおよそ37%(含水比59%)以上の条件であれば、短時間に土壌溶液中の無機イオンの定量測定が可能であることが明らかになった。但し水分条件毎に各イオンの採取効率を求めておく必要がある(図3)。例えば,この実験条件下では,土壌溶液中の硝酸イオンの濃度は,体積水分率が37%の場合,通水液の濃度に採取効率の逆数×100である1.35を乗じれば推定できる。
実験装置の概略
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成果の活用面・留意点 |
降水後や灌水回数の多い施設栽培など,土壌水分がある程度確保されている条件(体積水分率 約37%)で,本法を水分センサーとイオン検出器と組み合わせることで,簡便な肥培管理技術が期待できる。 異なる種類の土壌での適用の可能性を調べる必要がある。
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図表1 |
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図表2 |
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図表3 |
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カテゴリ |
肥料
管理技術
施設栽培
施肥
肥培管理
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