地球環境変化に伴う主要穀類ごとの栽培可能地域と生産量の変動予測

タイトル 地球環境変化に伴う主要穀類ごとの栽培可能地域と生産量の変動予測
担当機関 農業環境技術研究所
研究期間 1996~1996
研究担当者
発行年度 1996
要約 現在と2×CO2時の世界の主要穀類等栽培適地と可能地域,穀類ごとの生産量を予測した。栽培適地は,2×CO2時にイネ以外は1/3に減少するが,栽培可能地域全体では3%増加するため,主要穀類の生産可能量は,18%増加すると予測された。
背景・ねらい  近年,人間活動による大気の二酸化炭素濃度の上昇と,それに伴う地球の温暖化が農業生態系に対して悪影響を与えることが懸念されている。そのため,地球温暖化が主要穀類の生育環境に及ぼす影響を明らかにし,主要穀類の栽培地域と生産量の変動を予測する必要がある。そこで,世界の主要穀類栽培可能地域・栽培適地を衛星データ,土壌型,気象条件から推定する手法を開発した。この手法を用いて,気候変動シナリオに基づき,主要穀類等の栽培可能地域と穀類ごとの生産量の変動を予測した。
成果の内容・特徴
  1. NOAA/GVI(Global Vegetation Index)データによる世界植生地図から抽出された農業地帯の候補のうち,代表的主要穀類生産地域の気象条件(積算気温・降水量)と一致する地域を,現在の主要穀類等栽培可能地域として推定した(図1上)。
  2. 同様の手法により,Geophysical Fluids Dynamics Laboratoryの気候変動シナリオ(GFHI)を用いて,2×CO2時の栽培可能地域を予測した(図1下)。
  3. 2×CO2時の単収は,コムギとイネ,ダイズが30%増,トウモロコシが増減なしとして(IPCC,1996),生産量変動を予測した。
  4. 主要穀類の現在の栽培適地面積は,コムギ214Mha(million ha),イネ196Mha,ダイズ15Mha,トウモロコシ89Mhaと推定された。2×CO2時の栽培適地面積は,コムギ71Mha(million ha),イネ171Mha,ダイズ6Mha,トウモロコシ31Mhaと予測され,コムギ栽培適地の減少幅が大きかった。
  5. 主要穀類をそれぞれの栽培可能地域全体で栽培したとすると,現在の生産可能量は,コムギ1.53GMT(giga metric tons),イネ1.64GMT,ダイズ0.140GMT,トウモロコシ0.887GMTと推定された。2×CO2時の生産可能量は,コムギ1.95GMT,イネ2.40GMT,ダイズ0.225GMT,トウモロコシ0.777GMTと予測され,トウモロコシのみ減少が予測された(表1)。
成果の活用面・留意点
  1. 本研究成果は,大規模な穀類栽培地域を対象としたものである。
  2. 本研究成果は,自然環境条件から,主要穀類の栽培可能地域と栽培適地を推定したものである。
  3. 灌漑施設の有無,非農業地帯の農地化等の社会経済条件を取り入れた生産量・生産地域の変動については,今後の検討課題である。
図表1 225180-1.jpg
図表2 225180-2.gif
カテゴリ ICT 大豆 とうもろこし

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