タイトル |
水稲冷害被害の局地的変動に及ぼす土壌要因の影響解析 |
担当機関 |
農業環境技術研究所 |
研究期間 |
1997~1997 |
研究担当者 |
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発行年度 |
1997 |
要約 |
平成5年の水稲冷害において,気象・品種・栽培条件がほぼ同一な圃場間に見られた被害程度の局地的変動は,透水性が過小・過大な土壌で被害が大きく,作土が深いと軽減されるなど土壌要因とも関連していた。また,土壌の違いによる冷害被害への影響は土壌を主に透水性および還元性の強弱から類型化することにより評価できた。
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背景・ねらい |
平成5年に東北地方は作況指数56という障害型冷害に見舞われたが,気象条件がほぼ等しい狭い地域内で,品種・栽培条件も比較的揃った農家の圃場でも,対平年作収量比は著しく異なっていた。すなわち,秋田県比内町及び岩手県一関市の両管内の合わせて62圃場の平成5年の対平年作収量比は,比内(あきたこまち)で46.1~81.4(平均65.3)%,一関(ササニシキ)で5.0~64.6(平均30.8)%と大きな変動があった。そこで,冷害被害の局地的な変動に対する土地及び土壌要因の影響を,土壌調査データから解析することにより,冷害に備える土壌改良及び管理への指針を得ようとした。
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成果の内容・特徴 |
- 数量化理論Ⅰ類による解析から,土壌類型,作土深,作土の活性アルミ反応(黒ボク土性指標)及び比高の4要因が抽出され,水稲品種が同一で気象条件及び圃場管理に大差のない狭い地区内の収量変動については63%(比内)から71%(一関)が説明された。
- 両地区内の水田には,グライ低地土を主体に26土壌統群が出現したが,それらを粒径組成の細粗,腐植層の存否,表層グライ化および透水性区分から14タイプに類型化することにより,土壌の違いによる冷害被害への影響を評価した(表1,図1)。
- 土壌類型と冷害被害については,細粒質土壌では,強湿田型から乾田型へ還元が弱まるとともに収量比は高まるが,漏水田型では急激に低下する傾向が認められ,また,細粒質土壌に腐植層が存在すると,強湿田型では収量比が下がるが,漏水田型では上がる傾向であった。
- 中粗粒・礫質土壌では収量比が著しく低いが,細粒質表土を持つか表層グライ化したものは悪影響が弱まる傾向であった。
- 表面排水性の低下によって促進された表層グライ化は,半湿田型では収量比を下げるが,乾田型では収量比を上げた。
- 作土深は10cmより浅いと収量比の低下が大きく,14cmより深いと冷害は軽減された。また,作土のアルミニウム活性の強い黒ボク質の土壌では収量比が下がる傾向であった。
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成果の活用面・留意点 |
- 冷害の発生可能性のある水田地帯の土壌改良及び管理への指針となる。
- 現在の土壌図では作土深,土壌類型や,農耕地分類3次改訂版の分類基準である表層グライ化,作土の活性アルミ等は十分には読み取れないので,土壌診断などを活用する。
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図表1 |
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図表2 |
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カテゴリ |
栽培条件
水田
水稲
凍害
土壌改良
土壌診断
排水性
品種
圃場管理
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