タイトル |
畑地の一毛作と二毛作における炭素のシーケストレーションの評価 |
担当機関 |
農業環境技術研究所 |
研究期間 |
1997~1998 |
研究担当者 |
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発行年度 |
1997 |
要約 |
陸稲,トウモロコシ,大豆を一毛作した畑地と陸稲-大麦,落花生―小麦,トウモロコシ―大麦を二毛作した畑地における炭素収支を明らかにした。一毛作および二毛作畑地(表層腐植質黒ボク土)とも年間の炭素収支はマイナスを示したが,畑地を二毛作として利用することにより,年間当たり50~110gCm-2の炭素(CO2)放出の低減が可能であることが示唆された。
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背景・ねらい |
農耕地の管理・利用方法の違いによって,二酸化炭素の動態・収支がどの様に変化するのか,またどの様な管理方法により持続的でかつCO2の放出を低減した農業が可能であるかを解明し,農業生態系における炭素のシーケストレイション(隔離,封鎖)を評価する必要がある。ここでは,作付体型の異なる畑地生態系において炭素の動態と収支を解明し,炭素(CO2)の吸収源・供給源の視点から農耕地の評価を行う。
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成果の内容・特徴 |
- 陸稲,トウモロコシおよび大豆の一毛作畑地の年間の炭素収支は270~320gCm-2のマイナスを示した(表1)。このマイナス分は,地下70cmまでの炭素の蓄積量の1.2~1.4%に相当した。
- 陸稲―大麦,落花生―小麦およびトウモロコシ-大麦の二毛作畑地の年間の炭素収支も160~270gCm-2のマイナスを示し(表2),このマイナス分は,地下70cmまでの炭素の蓄積量の0.7~1.2%に相当した。
- 一毛作・二毛作畑地(表層腐植質黒ボク土;表層土壌(0~5cm)の炭素含量6.7~7.6%,窒素含量0.48~0.52%)とも,上記のような耕種方法を繰り返せば,土壌に蓄積されている炭素が年々消費され,耕地土壌の消耗を招くことが示唆された。
- 一毛作と二毛作の畑地における炭素収支を比較すると,二毛作畑地の方が炭素(CO2)の放出が少ないことが明らかになった。したがって,二毛作畑地として利用することにより,年間当たり50~110gCm-2の炭素収支の改善が可能であることが示唆された。
- 一毛作と二毛作畑地の炭素収支の違いは,主に冬作期における作物の炭素固定能に原因があり,畑地生態系からの炭素(CO2)の放出量を低減するためには,休閑期を減少し,畑地の利用期間をできるだけ長くする(作物の栽培期間を長くし,畑地を裸地状態にしない)ことが必要であると推察された。
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成果の活用面・留意点 |
- 一毛作畑地と二毛作畑地(表層腐植質黒ボク土)における炭素収支の実態を明らかにしたことにより,今後の対応についての基礎資料となる。
- 二酸化炭素の収支・動態の予測モデルを構築するための基礎資料となる。
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図表1 |
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図表2 |
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カテゴリ |
大麦
小麦
大豆
とうもろこし
二毛作
陸稲
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