タイトル |
中国内蒙古の砂漠化地域における持続的な放牧適正頭数 |
担当機関 |
農業環境技術研究所 |
研究期間 |
1994~1997 |
研究担当者 |
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発行年度 |
1997 |
要約 |
中国内蒙古の砂漠化地域で緬羊による放牧試験を実施し,4頭/ha以下が適正な放牧頭数であるが,放牧の継続にともない,4頭/ha程度の放牧頭数でも飼料価値の低い草種の割合が増加し,緬羊の生産性も次第に低下することを明らかにした。
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背景・ねらい |
過放牧による砂漠化が進む中国内蒙古の草原地域では,緑化などによる砂漠化防止や自然環境の再生のみならず,生産活動を維持していくための適正な土地管理手法の開発が必要とされている。そこで,内蒙古自治区奈曼(年平均気温約7℃,降水量約370mm)の放牧草地において,1992年より緬羊の放牧頭数の異なる4段階の処理区(6,4,2,0頭/ha,1処理区の面積は1.5ha)を設定して放牧試験を実施し,持続的な放牧利用のための適正放牧頭数を明らかにする。
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成果の内容・特徴 |
- 最大現存量は,6頭/ha区で著しく低い値で推移し,4頭/ha区でも次第に減少する傾向を示した。これに対し生産量は,6頭/ha区でもある程度の量が維持されており,現存量のような急激な低下は認められなかった(図1)。
- 生産された草種の構成をみると,禁牧区や2頭/ha区では,イネ科多年草など,粗タンパク含量等からみた飼料価値が中~高程度の草種がほとんどを占めた。しかし,放牧圧の増加にともなって飼料価値の低い草種の割合が増加し,6頭/ha区では80%を占めるに至った(図2)。
- 緬羊体重の推移を調べた結果,4頭/ha区までは毎年1頭あたり5~10kgの増加がみられた。また,単位面積あたりでみると,4頭/ha区が最も高い値で推移した。一方,6頭/ha区では試験3年目以降は体重が減少へと転じたことから,生産量の質的な変化が,緬羊の生産性にも大きな影響を及ぼしていることが示唆された(図3)。
- 試験の結果,4頭/ha程度が最も土地生産性の高い放牧圧であることがわかった。しかし試験の継続にともない,4頭/ha区においても低飼料価草種の割合が漸増するとともに,緬羊体重の増加量も漸減し,草地に対するインパクトが次第に強まっていることが示唆された。したがって,禁牧を含めたローテーション利用も同時に取り入れていくことが,砂漠化防止及び生産性維持の両面からみて望ましい。
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成果の活用面・留意点 |
現地及び同様の土地自然条件下の放牧草地における,適正な放牧利用計画のための基礎資料として活用できる。なお,植生の種類組成や被度等の動態については平成6年度成果情報(p23~24)で発表した。
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図表1 |
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図表2 |
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図表3 |
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カテゴリ |
羊
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