タイトル |
放射菌のキチナーゼ遺伝子の多様性とその発現制御機構の解明 |
担当機関 |
農業環境技術研究所 |
研究期間 |
1997~1997 |
研究担当者 |
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発行年度 |
1997 |
要約 |
土壌微生物の中の主要なキチナーゼ生産菌である放線菌は,4種類以上の細菌型キチナーゼ遺伝子と,2種類以上の植物型キチナーゼ遺伝子を有し,それぞれ性質の異なる多様なキチナーゼを生産する。また,キチナーゼ生産の直接の誘導物質はキトビオースである。
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背景・ねらい |
キチンを分解する酵素キチナーゼは自然界の炭素循環において重要である一方で,植物病原菌に対して溶菌作用を示すことから,土壌病害のバイオコントロールにその利用が期待されている。土壌の代表的なキチナーゼ生産菌であるStreptomyces 属放線菌のキチナーゼ生産能について,分子生物学的に解析し,キチナーゼ生産の人為的コントロールや機能を強化したキチナーゼの作出など,新たな利用法の開発に資する。
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成果の内容・特徴 |
- ショットガンクローニングにより,多くの細菌で見いだされているファミリー18型に属する3つのチナーゼ遺伝子(chiA ,chiB ,chiC )を得,それぞれ異なるドメイン構造をとっていることを明らかにした(図1)。さらに,コスミド整列ライブラリーから,新たなファミリー18キチナーゼ遺伝子(chiD 他)と,主に植物に見いだされれていたファミリー19型に属するキチナーゼ遺伝子3クローンを得た。また,これら複数のキチナーゼ遺伝子は放線菌(Streptomyces 属)に属する多くの種で保存されていることがサザンハイブリダイゼーションにより明らかになり,放線菌は系統的に全く異なるファミリー18と19のキチナーゼ遺伝子をそれぞれ複数ずつ併せ持ち,極めて多様なキチナーゼ生産能を有することが明らかになった(図2)。
- 放線菌のキチナーゼ生産は,基質であるキチンにより誘導されたが,グルコース等の糖類の共存下では抑制された。
- 種々の大きさのキチン分解産物の中で,キチナーゼ遺伝子の発現は,キチンの構成単糖(N-アセチルグルコサミン)2つからなるキトビオースにより誘導されることが明らかとなった。
- S. lividansキチナーゼ生産に対するグルコース抑制には,グルコース代謝関連酵素であるグルコースキナーゼが関与していることが明らかになった。
- 各種放線菌のキチナーゼ遺伝子のプロモーター配列の解析等より,放線菌のキチナーゼ遺伝子の発現は共通の制御を受けていることが示され,プロモーター断片に特異的に結合するタンパク質の遺伝子をクローニングした。
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成果の活用面・留意点 |
得られた遺伝子や情報をもとに,ハイブリッド酵素など,より高機能のキチナーゼの作出が期待できる。キチナーゼ遺伝子の多様性はStreptomyces 属のほとんどの種に当てはまると考えられ,生物界におけるキチナーゼの進化を知る上で重要な情報である。
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図表1 |
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図表2 |
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カテゴリ |
炭素循環
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