鳥と植物の相互関係からみた農村樹林地の維持・管理法

タイトル 鳥と植物の相互関係からみた農村樹林地の維持・管理法
担当機関 農業環境技術研究所
研究期間 1997~1997
研究担当者
発行年度 1997
要約  鳥と植物の相互関係の面から,農業に対する都市化の影響について調査した結果,樹林地内で顕著にみられた実生木本植物は,アオキやヒイラギナンテンなどで,ヒヨドリやオナガには採食可能で,他の鳥にとっては食べにくい大きさの果実をつける植物であった。また,これらの植物は,種子の捕集ピーク時に競合する種が少ないほど多くなる傾向がみられた。
背景・ねらい  現在,都市の林では,果実が大きいためヒヨドリやオナガしか食べないアオキが爆発的に増え植生を歪めている。一方,都市近郊の農村でもヒヨドリが増加し,野菜の食害を起こすようになっている。
 このことから,都市化は鳥と植物の相互関係を通じて,植生と鳥相の両方をゆがめ,農業に影響を及ぼしていることが考えられる。そこで,農業環境技術研究所内の樹林地において種子の散布と実生個体を調査し,樹林地の維持・管理法を検討した。
成果の内容・特徴
  1. 林内を10m×10mの方形区に分け,方形区ごとにシードトラップを設置して鳥糞を捕集し,種子が散布されている位置を調べ,実生個体(30cm以上)の位置と比較した。実生の木本植物のうちで顕著に見られたのは,アオキ・シロダモ・ヒイラギナンテンの3種であった(表1)。このうち林内に親木がなく,外から運ばれた種子が芽生えのもとになっているヒイラギナンテンについては,捕集された種子と実生の位置がほぼ一致し,芽生えの位置や量をもとに種子散布の様子を判断できることが判明した。ただしヒイラギナンテンの種子は,林縁部(図1の下側)で多く散布されているのに,芽生えは見られないなどの違いがあった。これは,ヒイラギナンテンが林内型植物であることと関係すると思われた。
  2. 鳥によって種子が運ばれる型の植物のうち,調査樹林地内における生育種と,その果実の大きさは表2に示すとおりであった。これを,実生個体が顕著にみられた植物について,平地農村に飛来する果実食鳥の口の大きさと比較したところ,ヒヨドリ,オナガは食べることができるが,他の鳥にとっては食べにくい大きさの果実をつける植物であることが判明した。このことから,この樹林地における鳥相はヒヨドリなどの特定種の多い構成となっているため,これらの実生個体の結実が,さらにヒヨドリを増やし野菜や果樹などの食害を増加させることが考えられた。
  3. アオキ・シロダモ・ヒイラギナンテンの3種は,その植物の種子が捕集されたピーク時に散布される種(競合種)が少ないほど実生個体数が多くなるという傾向がみられた。このことから,樹林地管理の対策として次の方法が考えられた。
    1. 林内における芽生えの数から,増加のおそれのある種が判明したときは,その散布時期に結実する植物を競合種として導入することにより,特定の種の散布量を制御する事が可能となる。
    2. 競合種に加え,小型の果実をつける植物を導入することで,鳥相を豊かにし,ヒヨドリのみが増加するという現象を防ぐことなどが考えられる。
成果の活用面・留意点  都市化が進む地域,及び都市域の植物園など,鳥が種子を散布する型の植物の侵入が考えられる農村樹林地における管理法の基礎的知見として活用できる。
図表1 225226-1.gif
図表2 225226-2.gif
図表3 225226-3.gif
カテゴリ 育種 シカ

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