タイトル |
病害虫進入阻止率に基づく輸入植物検疫サンプリングの評価法 |
担当機関 |
農業環境技術研究所 |
研究期間 |
1990~1995 |
研究担当者 |
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発行年度 |
1997 |
要約 |
わが国の輸入植物検疫によって病害虫の侵入がどの程度阻止されているかを推定するための確率モデルを提案した。輸入植物検疫規程で用いられているサンプリング法に適用したところ,この規程は荷口一つ一つの安全性の保証と輸入植物全体の安全性の保証という二つの要求を満たしていることが示された。
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背景・ねらい |
GATT(関税と貿易に関する一般協定)において「植物検疫上の要求が一部の国で非関税障壁として利用されている」という問題が議論されてきた。この問題を解決するためには植物検疫手順の科学的根拠を定量的に明らかにする必要がある。そのため,まず輸入植物検疫によって病害虫の侵入がどれだけ阻止されているのかを推定するための方法を提案し,これをもとにいくつかのサンプリング法の効果について比較検討する。
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成果の内容・特徴 |
- 任意の与えられた荷口に関して,その荷口の輸出元における病害虫の付着した植物の率(以下,不良植物率と言う)の確率分布は式1のベータ分布で近似できると仮定して確率モデルを構築した。このとき輸出国での平均不良植物率と輸入植物検疫後の国内での平均不良植物率はそれぞれ式2と式3で与えられる。
- キウイフルーツに関して1990年の輸入検疫データ(荷口数150,総サンプル数60,460果)から式1のパラメーターの最尤推定値を求めたところa=0.35,b=94.1が得られた。これより輸出国での平均不良植物率は3.72×10-3,植物検疫後の平均不良植物率は3.75×10-4 と推定された(図1)。したがって輸入植物検疫業務により不良植物率が0.1倍程度に低下しているものと推定された。また,式1の近似は妥当であることが示された(図1)。
- 輸入植物検疫規程におけるキウイフルーツのサンプル曲線を,(1)荷口一つ一つの安全性を保証するためのサンプリング曲線および(2)植物検疫後の平均不良植物率を最小にするためのサンプリング曲線と比較した(図2)。規程ではサンプル曲線の傾きはこれらの二つの曲線の中間の傾きに設定されていることから,荷口一つ一つの安全性の保証と輸入植物全体の安全性の保証という相反する二つの要求が満たされていることがわかった。
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成果の活用面・留意点 |
- さまざまな植物について輸入植物検疫の効果を推定することができる。
- いくつかのサンプリング曲線の効果を比較することができる。
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図表1 |
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図表2 |
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図表3 |
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カテゴリ |
害虫
キウイフルーツ
植物検疫
評価法
輸出
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