タイトル |
ホウ素及びストロンチウムの安定同位体比によるコメの生産国の判別 |
担当機関 |
農業環境技術研究所 |
研究期間 |
1999~1999 |
研究担当者 |
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発行年度 |
1999 |
要約 |
ホウ素同位体比(11B/10B)とストロンチウム同位体比(87Sr/86Sr)の違いから,国内産米と外国産米(オーストラリア産米,中国・ベトナム産米,カリフォルニア産米)の判別が可能である。
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背景・ねらい |
微量元素の安定同位体比は,資源探査や地質の年代測定に利用されている。たとえば,我が国のストロンチウム同位体比は地質年代の古い中国より低いことや,北アメリカの東西の沿岸地域は内陸部よりもストロンチウム同位体比が低いことなどが知られている。また,海水のホウ素同位体比は陸水より高いこと,陸水中のホウ素同位体比において,我が国とオーストラリアとでは異なることなどが知られている。このような同位体比の地域特性が作物に反映されれば,産地判別の手がかりになる。そこで,産地を異にするコメ(ジャポニカ種)のホウ素及びストロンチウム同位体比を調査し,コメの産地判別への適用を図る。
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成果の内容・特徴 |
- オーストラリア産米3点のホウ素同位体比(11B/10B)は,国内産米34点よりも有意に高かった(図1,上)。これは陸水中のホウ素同位体比を反映した結果と考えられる。
- カリフォルニア産米(1点)のストロンチウム同位体比(87Sr/86Sr)は,大多数の国内産米よりも低い値を示した。逆にオーストラリア産米と中国・ベトナム産米5点のストロンチウム同位体比は国内産米よりも有意に高かった(図1,上)。これらは,地球化学で知られている表層地質のストロンチウム同位体比の高低関係と一致する。
- ストロンチウム同位体比が0.709であった国内産米のうち,茨城産以外は西日本産であった。一方,同位体比が0.706~0.707であったもののうち,福岡産と熊本産以外は東日本産であった(図1,下)。
- コメのホウ素及びストロンチウム同位体比は生産地の同位体比を反映する傾向にあることから,ホウ素同位体比よりオーストラリア産米が,ストロンチウム同位体比よりオーストラリア,中国・ベトナム,カリフォルニア産米がそれぞれ判別可能と考えられる(図2)。
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成果の活用面・留意点 |
- 本成果は国内産米と外国産米(オーストラリア産米,中国産米,カリフォルニア産米)を判別する方法として有用性が高い。
- 国内産米間の産地の判別能を高めるためには,他の無機成分含量及び土壌型を組み合わせた統計解析による検討が必要である。
- 本研究で確立したホウ素同位体比分析法は,水系におけるホウ素汚染源の探査に応用できる。
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図表1 |
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図表2 |
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カテゴリ |
肥料
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