タイトル |
害虫の加害痕を利用する輸出植物検疫サンプリング検査の効果 |
担当機関 |
農業環境技術研究所 |
研究期間 |
1998~1999 |
研究担当者 |
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発行年度 |
1999 |
要約 |
輸出植物検疫におけるサンプリング検査の際に検疫害虫だけでなく検疫害虫の加害痕も対象として荷口の合格・不合格を決定する場合の検査効果に関する推定式を提案する。加害痕を利用することによりその検査効果は向上するものの,それは現行の殺虫処置を代替するほどの効果はないことがリンゴ果実の輸出検査に関して試算された。--検疫害虫の加害痕が存在する果実を加害痕果と定義し,生きた検疫害虫の存在する果実を在虫果と定義する。加害痕を用いる典型的な輸出サンプリング検査手順は次のように要約される。(1)荷口からサンプルを抽出する。(2)サンプル中の加害痕果数がある数よりも多ければ荷口を不合格とする。(3)サンプル中に在虫果が一つでもあれば荷口を不合格とする。(4)1から3の検査手順を繰り返す。(5)合格した荷口を輸出する。輸出場所によって加害痕果率は変化するため,次頁に記載されるような仮定に基づき推定モデルを作成した。輸出元での在虫果率の分散()を推定するためのデータが現時点では存在しないため,さまざまなについてサンプリング検査後の在虫果率()を推定した。加害痕を用いた検査の効果をゼロトレランス法のそれと比較したところ,許容しうる加害痕果の上限数(c)を小さく設定する場合には検疫安全性がかなり向上することがわかった。在虫果率はゼロトレランス法の場合と比べて10-1から10-2倍に小さくなりうる(図1)。ただし,在虫果率の低下率は最大で10-3程度であり,現行の殺虫処置のもとでの低下率(10-4)と比べて劣っていることから,このサンプリング検査は現行の殺虫処置を代替するほどの効果は持っていないことが示唆された。検査回数r を増やすにつれては減少するが,その効果は検査回数には比例しないことがわかった(図2)。[成果の活用面・留意点]- 正確には最尤推定にもとづいてパラメーターを推定する必要がある。
- 本方法はリンゴ果実だけでなく,他の植物に対しても適用可能である。
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背景・ねらい |
コドリンガが侵入する危険性が高いことから,現在アメリカ産のリンゴ果実は輸出前に適切な燻蒸,低温処理等の殺虫処置を施した場合に限り条件付でわが国への輸入が許可されている。これらの殺虫処置に代わるものとしてシステムアプローチという方式が近年アメリカ側から提案されている。このアプローチにおいて示唆されている輸出サンプリング検査手順には従来の検査手順にはみられない二つの特徴が含まれている。まず(1)従来の方法(ゼロトレランス法)では検疫害虫自体のみを検査対象としていたが,それだけでなく,検疫害虫の加害痕も検査対象として荷口の合格・不合格を決定する,そして(2)サンプリング検査を複数回おこなう。本研究では,この加害痕を用いた検査手順について,その検査効果を推定する方法を提案する。
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成果の内容・特徴 |
- 検疫害虫の加害痕が存在する果実を加害痕果と定義し,生きた検疫害虫の存在する果実を在虫果と定義する。加害痕を用いる典型的な輸出サンプリング検査手順は次のように要約される。(1)荷口からサンプルを抽出する。(2)サンプル中の加害痕果数がある数よりも多ければ荷口を不合格とする。(3)サンプル中に在虫果が一つでもあれば荷口を不合格とする。(4)1から3の検査手順を繰り返す。(5)合格した荷口を輸出する。
- 輸出場所によって加害痕果率は変化するため,次頁に記載されるような仮定に基づき推定モデルを作成した。輸出元での在虫果率の分散()を推定するためのデータが現時点では存在しないため,さまざまなについてサンプリング検査後の在虫果率()を推定した。
- 加害痕を用いた検査の効果をゼロトレランス法のそれと比較したところ,許容しうる加害痕果の上限数(c)を小さく設定する場合には検疫安全性がかなり向上することがわかった。在虫果率はゼロトレランス法の場合と比べて10-1から10-2倍に小さくなりうる(図1)。ただし,在虫果率の低下率は最大で10-3程度であり,現行の殺虫処置のもとでの低下率(10-4)と比べて劣っていることから,このサンプリング検査は現行の殺虫処置を代替するほどの効果は持っていないことが示唆された。
- 検査回数r を増やすにつれては減少するが,その効果は検査回数には比例しないことがわかった(図2)。
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成果の活用面・留意点 |
- 正確には最尤推定にもとづいてパラメーターを推定する必要がある。
- 本方法はリンゴ果実だけでなく,他の植物に対しても適用可能である。
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図表1 |
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図表2 |
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図表3 |
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カテゴリ |
害虫
植物検疫
輸出
りんご
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