タイトル |
硫酸イオンの吸着に対応する土壌酸性化モデル |
担当機関 |
農業環境技術研究所 |
研究期間 |
1998~1999 |
研究担当者 |
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発行年度 |
1999 |
要約 |
土壌による硫酸イオンの吸着量は,鉱物表面の水素イオンが付加した水酸基に水和した硫酸イオンが吸着するというモデルで説明できる。これを土壌酸性化モデルに導入することにより,酸性降下物による土壌pHなどの変化を正確に予測できる。
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背景・ねらい |
アジア諸国では経済成長にともない21世紀前半まで硫黄酸化物の排出量が大幅に増加することが予想されており,陸上生態系に対する酸性降下物の影響予測が必要になると考えられる。近年,そのための多くの数学モデル(土壌酸性化モデル)が開発されたが,土壌による硫酸イオンの吸着が十分に考慮されていないため,土壌pHなどの変化を正確に評価できない。本研究では,土壌による硫酸イオン吸着を計算するモデル(硫酸イオン吸着サブモデル)を考案して土壌酸性化モデルに導入することにより,土壌pHなどの変化を正確に予測することを目的とした。
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成果の内容・特徴 |
- 土壌による硫酸イオンの吸着は,酸化鉱物表面の水酸基に水素イオンが付加し,さらに水和した硫酸イオンが吸着するという静電的モデル(図1)で説明できた。つくば市の黒ボク土にこのモデルを適用し,異なるpHと硫酸イオン濃度における硫酸イオン吸着量を正確に計算できた(r2 = 0.986,図2)。
- 静電的硫酸イオン吸着モデルによる硫酸イオンと水素イオン吸着量の計算値は次の簡単な式で近似できた。
E SO4 = q [ H+ ] m [ SO42- ] n (1) E H = ( a pH + b ) E SO4 + c pH + d (2) ここで,E SO4とE H (kmolc kg-1) はそれぞれ硫酸イオンと水素イオンの吸着量,[SO42-]と[H+] (mol L-1)はそれぞれ硫酸イオンと水素イオンの濃度である。 q, m, n, a, b, c およびd は土壌 により異なる回帰係数であり,静電的モデルの計算結果から決定される。
- これらの式を硫酸イオン吸着サブモデルとして土壌酸性化モデルに導入した。1992年から硫黄酸化物の負荷を人為的に約1 kmolc ha-1 yr-1まで削減したドイツのSolling実験林(Dystric Cambisol; Beier et al., 1998)にこのモデルを適用し,硫黄負荷削減後の土壌水のpHや硫酸イオン濃度の変化を正確に予測できた(図3,4)。
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成果の活用面・留意点 |
このモデルで酸性降下物による土壌pHなどの変化を計算することにより,原因物質の排出削減計画や石灰散布などの環境修復計画を策定することができる。ただし,まだSollingの土壌でしかモデルの検証をしていないので,他の土壌種についても計算値と実測データを照合してモデルの適用性を確認する必要がある。
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図表1 |
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図表2 |
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図表3 |
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図表4 |
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カテゴリ |
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