タイトル |
野外計測用高速ハイパースペクトル画像計測システム |
担当機関 |
農業環境技術研究所 |
研究期間 |
1999~1999 |
研究担当者 |
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発行年度 |
1999 |
要約 |
数ナノ程度の高い波長分解能をもち,可動部なしに約15msec/波長の高速でハイパースペクトル画像を連続的に記録可能な,野外用画像計測システムを試作開発した。水稲を対象にした測定データ等により,植物情報計測へ応用可能なことを示した。
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背景・ねらい |
植物や土壌の可視~短波長赤外までの分光反射スペクトルには多くの生理生態・成分情報が反映されており,高い波長分解能(ハイパースペクトル)の計測データに基づいたこれら情報の抽出が期待されている。将来的にはハイパースペクトル衛星センサが利用できる可能性もある。そのため,野外条件において使えるハイパースペクトル画像計測システムを試作開発し,サンプルデータによってその有効性を検証する。
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成果の内容・特徴 |
- ハイパースペクトルと画像計測という二つを同時に満たす測定を行うことを目的に,AOTF(Acousto-Optic Tunable Filter)を用いたハイパーイメージングスペクトロメータを試作した。本システムでは二酸化テルル結晶に周波数の異なる振動を与えることにより,屈折率を変化させて分光フィルタの機能を持たせ,周波数に応じた波長別の画像をCCDカメラで検出する。本装置の測定波長範囲は500~1000nm,波長分解能(半値幅)は可視域3nm~近赤外域5nmである。コンピュータ制御により波長,波長数,繰返し記録数などが簡単にプログラムできる(図1)。機械的可動部がないためミリ秒オーダで特定波長の画像を選択・走査できる。記録にはHi8 VTRテープを用い,長時間連続記録を可能とした。小型軽量で,すべてDC駆動であり特に野外計測に好適である。
- システムの特性を検証するため,生長量と窒素濃度,クロロフィル濃度の異なるイネの幼植物群落30群落を対象に連続分光画像計測を行った。同期計測した画像から抽出した植物領域の反射スペクトルパターンはバイオマスと窒素濃度に応じて大きく変化し(図2),5~8波長程度の反射率を用いた重回帰モデルにより,窒素濃度,クロロフィル指数,窒素量について高い決定係数(自由度補正済で0.8程度)が得られた(図3)。
- また,土壌上に出芽したイネ幼苗のハイパースペクトル画像により,植物体が精度よく分離され(図4),画像処理によって評価した苗立ち数の推定誤差は1~2%程度であった。
以上,ハイパースペクトル画像計測装置は,高い波長分解能と多波長連続測定のもつ情報量の多さを生かした成分情報や生理状態の抽出評価等に有効である。
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成果の活用面・留意点 |
- 植物生理生態学研究や精密農業管理のためのリモートセンシング・非破壊センシング手法の研究,将来衛星センサのシミュレーション検証などにも応用可能。
- 波長域両端で感度が低い,視野角がやや狭い(10゜程度),波長収差が若干ある等,現存素子の性能に起因する制約に留意。絶対反射率への変換には標準板による校正が必要。
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図表1 |
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図表2 |
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図表3 |
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図表4 |
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カテゴリ |
ICT
画像処理
植物生理
水稲
センシング
リモートセンシング
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