タイトル |
家畜排せつ物が土壌に還元されているシラス台地畑地下水のトリハロメタン生成能 |
担当機関 |
農業環境技術研究所 |
研究期間 |
2000~2000 |
研究担当者 |
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発行年度 |
2000 |
要約 |
家畜排せつ物が還元されている厚層黒ボク土シラス台地畑作地帯の地下水のトリハロメタン生成能(THMFP)は同台地の渓流水に比べて低い。溶存態イオン濃度からみて家畜排せつ物還元の影響も考えられる地下水であるが,有機物濃度やTHMFPに対する影響はみられない。
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背景・ねらい |
家畜排せつ物は有機物に富み,その有機物が土壌に還元されて地下に浸透・流下すれば地下水の有機物濃度を高め,飲料水で問題となるトリハロメタン生成能(THMFP)を高める可能性がある。そこで,畜産業が盛んで家畜排せつ物の農耕地土壌への還元が行われている九州地方南部における代表的土壌であるシラス台地の畑作地帯において,地下水の有機物汚濁の有無とTHMFPについて検討した。
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成果の内容・特徴 |
- 調査地域は家畜排せつ物の土壌還元が行われている宮崎県都城市月野原の厚層黒ボク土シラス台地畑地下水(不圧地下水)(一号井戸;30m,二号井戸;25m,いずれも管井戸)と,比較対照として同台地西側から流出する渓流水について,一般水質とともにTHMFPを一年間にわたって調査した。なお,同台地における家畜排せつ物の土壌還元量は351kg-N/haと推定されている(倉知,1999)。
- 調査地下水はNO3--Nなどの溶存態イオンの濃度やEC値が渓流水に比べて高く,農業集水域小河川と類似し,家畜排せつ物の土壌還元の影響も考えられる水である(表1)。しかし,THMの前駆物質である溶存有機態炭素 (DOC)は低く(表1,図1),有機物は地下深くには流下しないことを示している。
- 地下水の THMFPは渓流水に比べて低く,一号井戸で2.5~5.6,二号井戸で3.3~9.0μg/Lであり,地下水と渓流水間には統計的に有意差がある(表1,図1)。また,単位炭素濃度あたりのTHMFPも渓流水に比べて低い(表1)。地下水に溶存する有機物は波長260nmの紫外部吸光度が小さいことにも示されるように不飽和度が低いためと考えられる(表1)。
- 試料水全体について,THMFPとDOCとの相関係数は低い(r=0.471)が,紫外部吸光度とは高い相関が認められる(図2)。
- 地下水は相対的に有機物濃度に対してBr-濃度が高い,すなわちDOC/Br比が小さい(表1)ために,生成するTHMの組成の中で Brを含む成分の割合が渓流水に比べて高い(図3)。
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成果の活用面・留意点 |
調査地下水のようにかなり深い場合,表層に家畜排せつ物が還元され,無機成分的には汚濁されていると見られる場合でもTHMFPに影響がみられなかったが,これは厚層黒ボク土の場合の特殊性の可能性もあるので,農業域地下水に一般的に適用するには留意する必要がある。
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図表1 |
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図表2 |
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図表3 |
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図表4 |
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カテゴリ |
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