タイトル |
昆虫病原性線虫 Steinernema feltiae分布・識別・殺虫活性 |
担当機関 |
農業環境技術研究所 |
研究期間 |
2000~2002 |
研究担当者 |
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発行年度 |
2000 |
要約 |
昆虫病原性線虫 Steinernema feltiae が日本に分布することを明らかにした。本種の識別には,成虫の外部生殖器および感染態幼虫の形態が有効である。日本産と外国産との種内識別は,DNAのRFLP解析でできる。殺虫活性は7℃から25℃にかけて安定して高い。
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背景・ねらい |
昆虫病原性線虫Steinernema feltiaeは鱗翅目や双翅目などの様々な昆虫に対して高い殺虫活性を示し,欧米では天敵製剤としてすでに実用化されている。本種は世界的に広く分布しているが,日本における明確な分布記録はない。土着の昆虫病原性線虫の探索および分類学的研究を行う過程で,本種を北海道から検出した。そこで,日本産アイソレートを土着天敵として生物的防除に利用するための前段階として,分類学的ならびに生物学的特性を解明する。
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成果の内容・特徴 |
- 他種からの識別
本種は,メス成虫の陰門開口部およびオス成虫交接刺(外部生殖器)の形状と感染態幼虫のa値(体長/体幅,平均値≧30)・側帯(体側部線条構造帯)の形状等の比較により,日本産の他の種から識別できる。
- 種内変異の識別
リボソームDNA(r DNA)のスペーサー領域(ITS)の制限酵素断片長多型(RFLP)パターンの違いにより,本種のヨーロッパ産アイソレートには2つの型(A1:メジャータイプ,A2:マイナータイプ)が知られている。日本産アイソレートは,既知の型と異なるパターンを示した(図1)。
- 分布
本種はヨーロッパ,北・南米,オセアニア等世界各地に分布している。日本では本州以南からは検出されず,北海道からのみ検出された。検出地は海岸部の草地・潅木林が多かった(図2)。
- 殺虫活性
土壌存在下でニセタマナヤガ2~3令幼虫に対する殺虫活性試験を7℃から25℃の間に5段階の温度設定で行った。殺虫活性は全試験区で80%以上の高い致死率を示し,7℃から15℃の試験区でも活性が高かった(図3)。
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成果の活用面・留意点 |
- 日本産S. feltiaeを生物的防除に利用するための基礎的データとなる。北海道で検出され,低温域で高い殺虫活性を示したことから,寒冷地での利用が期待できる。
- rDNAのITSのRFLP解析は,天敵製剤として実用化されているヨーロッパ産アイソレートが導入された場合,これと土着アイソレートとの識別に利用できる。
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図表1 |
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図表2 |
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図表3 |
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カテゴリ |
病害虫
生物的防除
土着天敵
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