水田の田面水から大気中へのCO2放出に及ぼす大気CO2濃度上昇の影響

タイトル 水田の田面水から大気中へのCO2放出に及ぼす大気CO2濃度上昇の影響
担当機関 農業環境技術研究所
研究期間 1997~2000
研究担当者
発行年度 2000
要約 大気CO2濃度が上昇すると、水田の田面水から大気中へのCO2放出量が減少する。この原因は、高大気CO2濃度条件では田面水中の藻類、ウキクサ等の植物が増加し、光合成によるCO2吸収量が増加するためである。
背景・ねらい 水田生態系においては、水稲の他に、田面水中の藻類、ウキクサ等の植物によっても光合成による炭素の固定が行われている。また、水稲の光合成によって固定された炭素は、その一部が根に転流し、根の呼吸の結果、土壌から田面水を通して再び大気中に放出されている。これらのことから、水田生態系における炭素の動態・収支を把握するためには、水稲の光合成・乾物生産のみならず、田面水-大気間でのCO2の動態を把握することが必要である。
本研究では、岩手県岩手郡雫石町のFACE(開放系大気CO2増加)実験圃場において、対照区(CO2濃度日平均392ppm)および高大気CO2濃度区(CO2濃度日平均597ppm)それぞれの田面水から大気中へのCO2放出の経時変化を観測し、大気CO2濃度の上昇が田面水から大気中へのCO2放出に与える影響を明らかにした。
成果の内容・特徴
  1. 対照区の田面では、CO2は1日をとおして田面水から大気中へ放出されており、日中のCO2放出量は低く、夜間は高くなる。しかし、高大気CO2濃度区では、夕方~翌朝にかけてはCO2は田面水から大気中へ放出されるが、光強度の高い日中にはCO2は大気中から田面水に吸収される(図1)。この日変化のパターンは、対照区・高大気CO2濃度区ともに夏期(7月~9月)を通して不変である。
  2. 田面水から大気中へのCO2放出量は、田面水中の植物(藻類、ウキクサ等)の現存量と負の相関関係を示す。また、高大気CO2濃度条件では、田面水中の植物が増加し、その光合成によるCO2吸収量が増加する結果、田面水から大気中への1日当たりのCO2放出量が減少する(図2)。
成果の活用面・留意点
  1. 将来予測される大気CO2濃度の上昇に対応した、水田生態系でのCO2の収支・動態の予測モデルを構築するための基礎資料となる。
  2. FACE装置を用いた、様々な地域の水田における田面水から大気中へのCO2放出量に関するデータの蓄積が必要である。
図表1 225292-1.gif
図表2 225292-2.gif
カテゴリ 水田 水稲

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