タイトル |
平地の農耕地を中心とした地域景観の広域的評価手法 |
担当機関 |
農業環境技術研究所 |
研究期間 |
2000~2000 |
研究担当者 |
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発行年度 |
2000 |
要約 |
水田および畑地を中心とした地域景観(農耕地景観)を対象に,アンケートを用いて景観評価構造を解析し,平地の農耕地景観は,山間地と異なる評価構造を持ち,広がり感を中心に自然感/伝統感などが連動して評価されることを解明した。これに基づき,既存の地理情報から平地の農耕地景観を広域的に評価する手法を開発した。
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背景・ねらい |
景観保全は農業の持つ多面的機能の重要な柱の1つであり,その客観的評価手法の開発が国内外から要請されている。本研究は水田および畑地を中心とした地域景観(以下「農耕地景観」)に対する地域住民の心理的な評価構造を解明し,それに基づいて農耕地景観を既存の即地情報の利用により広域的に評価する手法を開発する。
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成果の内容・特徴 |
- 埼玉県内11地点の水田景観,群馬県内6地点の畑地景観を対象に地域住民による景観評価構造を調査した。アンケートにより好ましい景観の選好理由を16の形容詞(8対)から選択させ,主成分分析に供した。その結果,水田,畑地とも「広がり感」を中心に様々な項目が総合化された第1主成分と,「広がり感」を除き「自然感」または「伝統感」が中心の第2主成分が抽出できた(表1,2)。これらのことから,農耕地景観を好ましいと評価する上で「広がり感」,「自然感」,「伝統感」が重要な成分であることがわかった。逆に,好ましくない要素としては電柱,住宅地,ガードレール等の人工構造物が指摘された。
- 上記の結果に基づき,関東地方の代表的水田および畑地景観(各5地点)に対する「広がり感」,「自然感」,「伝統感」の3成分に対する評価をアンケートにより求め,評価構造と地点特性の関係の一般性を検証した。その結果,農耕地が平地に立地する場合と山間地に位置する場合では評価構造が異なること,平地に立地する農耕地では被験者による評価のバラツキが小さく,かつ,3成分に対する評価が連動することが明らかとなった(表3)。これらのことから,平地の農耕地景観については広域的評価が可能と考え,次の評価式を得た。
〔平地の農耕地景観評価〕=f1(「広がり感」+「自然感/伝統感」)-f3(「人工構造物」)
- 上記の概念式に既存の地理情報を適用すれば広域的評価が可能となる。ここでは,国土数値情報3次メッシュ・データを用い,平地農耕地を中心とした地域景観(3次メッシュ中の50%以上の面積を平地の水田または畑地が占めるメッシュ)の広域的評価を試みた。ここでは,「広がり感」に水田または畑地の面積率を,「自然感/伝統感」に森林面積率を,「人工構造物」に建物用地面積率と道路密度を適用し,関東地方の評価図を作成した(図1)。
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成果の活用面・留意点 |
- 本評価手法は,平地農耕地が卓越する地域(平地農業地域など)の景観を広域的に評価する際に有効な手法である。
- 中山間地域等の傾斜地農耕地については,広がり感と自然感または伝統感が連動せず,評価が人により分かれることから上記の広域的評価式は適用できない。
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図表1 |
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図表2 |
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図表3 |
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図表4 |
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カテゴリ |
傾斜地
水田
中山間地域
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