タイトル |
水移動上の土地利用連鎖状態に基づく流域単位での自然窒素浄化量の予測手法 |
担当機関 |
農業環境技術研究所 |
研究期間 |
2000~2000 |
研究担当者 |
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発行年度 |
2000 |
要約 |
評価対象流域内の発生源別窒素流出量をフレーム値×各原単位×流出係数で算出し,その総和(流出ポテンシャル)と実測の窒素流出負荷量との比を流達率(土壌蓄積量と浄化量の大きさで変動)とする。浄化量の大きさに依存する部分(流達係数)は水移動上の土地利用連鎖状態を反映する流域特性で定量的に決定できる。
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背景・ねらい |
現在OECD農業部会は農業が環境に及ぼす影響を指標化する作業を進めている。水質項目も重要な指標の一つとされ,主にカナダ,ドイツチームを中心として検討が重ねられている。畑,樹園地,草地からの窒素の流出に関しては,これらチームから提案されている水収支及び窒素成分の物質収支式を組合せて算出する単純なIROWC法の小改良で充分とも考えられるが,わが国のように水田等の湛水域が畑,樹園地,草地と河川,湖沼等の水域間に大面積存在する場合には,本域で窒素成分が脱窒除去される量は無視出来ない。 そのため,上記の土地利用連鎖因子を含み,かつ実際に観測される窒素流出量を的確に表現する簡易指標の策定が求められている。
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成果の内容・特徴 |
- 霞ヶ浦流域で特に農業,畜産活動の活発な地帯を流下する5河川を選定,流出遅延に基づく誤差を最小とするため,各河川について流出ポテンシャルで過去50年間,実測窒素流出負荷量で過去30年間の変動を行政的に得られるデータを基に算出,その各々の最大値を使用し,さらに畑,樹園地,草地からの流出水が水田等の湛水域を通過する比率をf1,同湛水域に流入する全水量(面積換算値)に対する同湛水域の面積比率をf2と定義,これらを算出し,流達率との関連をみた(表2,図2)。その結果,
流達係数 = 1.0 - 2.39 f1 f2 が求められた。このとき,f1よりもf2(該当湛水域内での滞留時間因子であり,本値が大きいほど滞留時間は長い)の変動幅は大きく,このことは該当湛水域に畑,樹園地,草地以外の例えば林地から流入する水量大のとき,該当湛水域内での滞留時間を低下させ,脱窒に基づく窒素除去量が少となることを示している。
- f1,f2を算出するための流域単位での水質解析・評価のための各種手順をルーチン化したGISが構築されている(表1,図1)。
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成果の活用面・留意点 |
- 一般に流出率の定義は、負荷投入面での発生負荷量に対する評価地点の流出負荷量であるが、上に示す流出係数は、負荷投入面内の土壌蓄積に基づく流出低下の要因を含めない。これに対応して、流出負荷量に対して流出ポテンシャルを定義した。
- 本結果は,水質・水量に関するモニタリング調査結果がなくても,年間窒素流出負荷量並びに年平均窒素濃度を流域特性のみでかなり正確に予測出来る可能性を示している。
- 水移動にともなう地形連鎖状態をとらえるための条件を一定とするため,各種地図情報の縮尺を,1ピクセルの各辺を10~15m内の一定値とする必要がある。
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図表1 |
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図表2 |
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図表3 |
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図表4 |
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カテゴリ |
水田
ブロッコリー
モニタリング
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