タイトル |
土壌溶液中カドミウム濃度による玄米中カドミウム濃度の推定 |
担当機関 |
(独)農業環境技術研究所 |
研究期間 |
2000~2002 |
研究担当者 |
菅原和夫
大和田章衣(茨城大学)
牧野知之
櫻井泰弘
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発行年度 |
2002 |
要約 |
出穂期以後の湛水期間と玄米中カドミウム濃度の間に逆相関が認められ,湛水期間が長くなるほど玄米中カドミウム濃度が低下する。また,出穂期以後の土壌溶液中カドミウム濃度と玄米中カドミウム濃度の間には相関が認められ,土壌溶液中カドミウム濃度を指標に玄米中カドミウム濃度の推定が可能である。
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背景・ねらい |
水稲のカドミウム吸収量は,土壌の酸化還元状態や土壌pHなどの影響を受けるため,同じ土壌に栽培しても,水管理や土壌改良資材の施用により大きく変動する。このため,水稲に最も吸収されやすいCd(可給態Cd)の測定法は確立されていない。そこで,水稲の栽培期間を通じて,ポーラスカップを用いて土壌溶液を採取し,Cd濃度を測定する。さらに,収穫期の玄米中Cd濃度を測定し,土壌溶液中Cd濃度と玄米中Cd濃度の関係を解析することにより可給態Cdの実態を明らかにする。
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成果の内容・特徴 |
- 全国から入手したCd汚染土壌(黒ボク土3種類,灰色低地土2種類,グライ土1種類)および非汚染土壌を用いて,水稲のポット試験を行った。水稲の栽培期間中,土壌表面から15 cm下に埋設したポーラスカップを用いて,経時的に土壌溶液を採取しCd濃度を測定した。
- 出穂期以後に落水すると,出穂後2週目に土壌溶液中Cd濃度が湛水区の約100倍に上昇し,その後は高い濃度を維持した(図1,落水区)。
- 出穂後2週目以降の土壌溶液中Cd濃度と収穫期の玄米中Cd濃度の間には高い相関が認められた(図2)。この関係は,水管理の違い(常時湛水または出穂期以後落水)や土壌改良資材施用の有無(図2)など,異なった処理区間でも成立した。
- 出穂期以後の湛水期間と玄米中Cd濃度の間に逆相関が認められ,湛水期間が長くなるほど玄米中Cd濃度が低下した(図3)。湛水期間中は土壌の酸化還元電位が低く保たれ(データは省略),土壌溶液中Cd濃度が低いレベルに維持されるので(図1),収穫作業等に支障を来さない範囲で出来る限り遅くまで湛水することが望ましい。
- 以上の結果から,土壌溶液中Cd濃度は水管理の違いや土壌改良資材の施用等に敏感に反応して変動することが分かった。また,出穂後2週目以降の土壌溶液中Cd濃度は土壌の種類や栽培条件には関係なく,玄米中Cd濃度と相関があり,土壌中の可給態Cdを推定する良い指標になり得る。
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成果の活用面・留意点 |
- 土壌溶液中Cd濃度は数十μg/L以下であるので,ファーネス原子吸光法または誘導プラズマ質量分析法により分析すること。
- ポーラスカップはCdを吸着するので,あらかじめ多量の土壌溶液を採取し,吸着が認められなくなってから使用すること。
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図表1 |
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図表2 |
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図表3 |
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カテゴリ |
栽培条件
水稲
土壌改良
水管理
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