タイトル |
メダカを使って化学物質の内分泌かく乱作用を簡易に検出する |
担当機関 |
(独)農業環境技術研究所 |
研究期間 |
1999~2002 |
研究担当者 |
堀尾剛
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発行年度 |
2002 |
要約 |
孵化したばかりのメダカを化学物質に2週間の曝露を行い,孵化後2ヶ月以内にオスからメスに性転換した個体を検出できる試験系を開発した。この試験系により化学物質の内分泌かく乱作用を簡易に判別できる。
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背景・ねらい |
近年,農薬等化学物質の内分泌かく乱作用が懸念されている。環境生物においては,化学物質に曝露される機会が多いため特に水生生物への影響が大きいと考えられる。淡水性魚類に対する化学物質による内分泌かく乱作用の中で,女性ホルモン様作用については,細胞・生体を用いた試験法が数多く検討されている。また,化学物質を生育過程の数ヶ月間あるいは全生育期間に曝露した場合の試験法は開発されているが,いずれの試験法も多大な労力と長い期間を要する試験法である。そこで,生物個体を使って簡易に評価する試験法を開発する。
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成果の内容・特徴 |
- 試験生物としてメダカのd-rR系統を用いた(図1)。この系統のメダカは,体色は本来の性別と緊密に関連づけられているため,オスの黄色およびメスの白色は不変である。一方,生殖器官の性分化や尻ひれの形に代表される形状はホルモンの作用によって変化を受けやすい。本試験法において,メス特有の幅細・丸みのある尻ひれを有する個体は,生殖組織も卵巣へ分化している。これらの形質を利用して,性転換した個体を容易に検出することができる。
- 流水式の曝露装置を用いた試験法を開発した(図2および3)。すなわち,メダカ仔魚を試験物質に2週間曝露して,その後試験物質を含まない飼育水に移し,外見的に雌雄が判別できるまで40日間飼育する。そして体色と尻ひれの形状等の観察を行い,オスからメスに性転換した個体を調査する。この性転換率により内分泌かく乱の程度を判定する。この試験法を用いることにより,これまで多大な労力を要していた生殖組織の顕微鏡観察の作業を省くことができ,簡易な検定が可能になる。また,これまで2ヶ月以上必要であった化学物質曝露期間が2週間に短縮できる利点を持つ。
- 実施例として,弱い女性ホルモン作用を有する4-ノニルフェノールを本試験法にすると,300μg/l濃度区において75%の個体でオスからメスへの性転換が確認される(図4)。また,水田で使用されることが多い除草剤のうち,メフェナセット,シメトリン,ベンチオカーブ,イマゾスルフロン,プレチラクロールに対して試験を行った結果,性転換した個体は検出されず,これらの農薬は女性ホルモン様作用を指標とする内分泌かく乱作用はない(図4)。
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成果の活用面・留意点 |
- 尻ひれの形および体色から容易に性転換個体を検出できるため,生体を用いての化学物質の非可逆的な女性ホルモン様作用の簡易検出法として活用できる。
- 本成果は化学物質の女性ホルモン様作用の試験結果であるが,男性ホルモン様作用にも応用が可能である。
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図表1 |
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図表2 |
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図表3 |
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図表4 |
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カテゴリ |
病害虫
除草剤
水田
農薬
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