タイトル |
カドミウムで汚染された水田を修復するための土壌洗浄法 |
担当機関 |
(独)農業環境技術研究所 |
研究期間 |
2003~2007 |
研究担当者 |
伊藤正(長野農試)
関谷尚紀(長野農試)
高野博幸(太平洋セメント)
小津博(太平洋セメント)
神谷隆(太平洋セメント)
菅原和夫
前島勇治
牧野知之
櫻井泰弘
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発行年度 |
2004 |
要約 |
水田に化学洗浄剤と用水を加えて代掻きし,土壌中のカドミウムを溶出して排水除去し,現場設置型の排水処理装置でカドミウムを回収する。本法は土壌中のカドミウムを速やかに除去して修復し,玄米収量を低下させずに玄米のカドミウム含量を大幅に低減できる。
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背景・ねらい |
米・小麦等の食品中カドミウム含量の国際的な基準値が策定されつつあり,汚染土壌の修復が要望されている。カドミウムで汚染された水田の浄化に適用可能な土壌洗浄法を開発する。
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成果の内容・特徴 |
- 洗浄剤には安価で環境負荷が少なく,カドミウム抽出効率の高い塩化第二鉄が適する(図1)。
- 水田を畦板で囲み漏水を防止した後,塩化第二鉄を施用して代掻きを行い,カドミウムを溶出して排水する(写真1)。用水で繰り返し水洗浄して残存カドミウムおよび塩素を除去する。通常の施用量は塩化第二鉄として100 ~700 kg/10aである。
- 現場設置型の排水処理装置はキレート資材を内蔵し,排水中のカドミウムを選択的に回収する(写真1)。処理後の排液中のカドミウム濃度は排水基準(0.1 mg/L)以下に低下する。
- 土壌のカドミウムは塩化第二鉄を用いた洗浄処理で除去され,0.1モル/Lの塩酸で抽出されるカドミウムは無洗浄区の50%程度まで大きく低下する(図2)。この洗浄効果は少なくとも栽培終了時まで維持される。
- 洗浄処理後に栽培した水稲「あきたこまち」の生育および収量に対する悪影響はなく,稲わらおよび玄米中のカドミウム含量は大幅に低減される(図3)。
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成果の活用面・留意点 |
- カドミウム汚染水田の浄化・修復に活用できる。本成績は粘土,シルト,砂をそれぞれ16,30,54% 含む礫質灰色低地土の水田におけるものであり,洗浄効果の持続性については検討中である。
- 洗浄剤と土壌の攪拌混合には通常の代掻き機を利用できる。
- 現場設置型の排水処理装置は排液中カドミウム処理のため必須である。
- 本法を現地で実施する前に洗浄剤による土壌からのカドミウム溶出試験を行い,最適施用量を決定する必要がある。
- 透水性の高い砂質水田などでは下層へのカドミウムの浸透に留意する必要がある。
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図表1 |
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図表2 |
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図表3 |
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図表4 |
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カテゴリ |
小麦
水田
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