タイトル |
キュウリ苗立枯病を抑える組換え微生物の土壌微生物相への影響 |
担当機関 |
[分類] |
研究期間 |
2004~2005 |
研究担当者 |
藤井毅
田村季実子
大野雅弘(現日産化学)
長谷部亮(現農水省)
中島雅己(茨城大)
阿久津克己(茨城大)
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発行年度 |
2005 |
要約 |
作物病原菌の細胞壁を分解する酵素キチナーゼの遺伝子を導入した組換え根圏細菌は,キュウリ苗立枯病の発生を抑制する。また,この組換え根圏細菌の接種は根圏の土壌微生物の群集構造に影響を与えない。
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背景・ねらい |
作物病原糸状菌はその細胞壁にキチン質を含んでおり,このキチン質を分解する酵素キチナーゼは,作物病害菌を溶菌させることにより作物病害の抑止効果が期待される。そこで,生育初期のキュウリ根圏に定着性が高い根圏細菌にキチナーゼ遺伝子を導入した組換え根圏細菌を作出し,溶菌によるキュウリ苗立枯病の抑制効果を検討するともに,組換え根圏細菌の土壌中での挙動,根圏に生息する微生物相に及ぼす影響等を解析する。
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成果の内容・特徴 |
- キュウリ根圏土壌から選抜・単離した根圏に高い定着性を示す土壌細菌に海洋細菌由来のキチナーゼ遺伝子を導入した組換え根圏細菌(Pseudomonas putida B1017R株)は,高いキチナーゼ生産能を有している。
- この組換え根圏細菌の培養液に,5~10mm発芽したキュウリ種子を1時間浸すことにより,キュウリ苗立枯病の発病を抑制することができる(図1)。
- この組換え根圏細菌を土壌に接種した場合,その生菌数は1ヶ月後には接種時の0.1%まで低下する。組換え根圏細菌を接種したキュウリ苗根圏の総細菌数および総糸状菌数は組換え菌接種および非接種区の間で大きな変化はない。また,組換え根圏細菌を接種したキュウリ根圏の細菌相および糸状菌相の変遷を,変性剤濃度勾配ゲル電気泳動(DGGE)法を用いて組換え菌非接種区と比較しても顕著な差は見出されない(図2)。すなわち,本組換え根圏細菌は根圏微生物相に大きな影響は及ぼさない。
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成果の活用面・留意点 |
- キチナーゼ生産能を付加した組換え微生物は,キュウリ苗立枯病だけにとどまらず糸状菌が引き起こす種々の作物病害の防除に利用が期待できる。
- こうした組換え微生物の実用化に向けて,環境への影響を最小限に抑えるためには,プラスミドに存在するキチナーゼ遺伝子を染色体に移し換え安定化させると同時に,薬剤耐性遺伝子を除去し,また,不要となった場合に自動的に死滅するようなスイサイドシステムを導入するなど更なる改良を加えことが望ましい。
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図表1 |
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カテゴリ |
病害虫
きゅうり
立枯病
防除
薬剤耐性
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