生物多様性保全のための景観・植生調査解析システム

タイトル 生物多様性保全のための景観・植生調査解析システム
担当機関 [分類]
研究期間 2001~2005
研究担当者 井手任
大黒俊哉
楠本良延
発行年度 2005
要約 農業生態系における植生分布や多様な生物生息地の変動を地域~国土スケールで効果的にモニタリングするため,客観的に類型化された調査単位および統一的な解析手法からなる景観・植生調査解析システムを開発した。 
背景・ねらい 生物多様性保全に対する関心が高まるなか,農耕地を中心とした二次的自然環境に生息する生物についても,その動態を全国スケールで把握し,環境変化に伴う影響を予測する手法の開発が求められている。そこで,わが国農業生態系における景観・植生の変動に関する調査研究を体系的・効果的に蓄積・利用する調査・解析システムを構築するとともに,その活用法を提示した。
成果の内容・特徴
  1. 3次メッシュ(約1km×1km)を単位として,気象,土壌,地質,地形,植生,交通立地の因子に関わる数値地図情報を多変量解析の手法により統計的に処理し,全国農業生態系を46クラスに区分する。調査・解析はこれらのクラス単位で行う(図1)
  2. 各クラスについて,それぞれモニタリング地区(3次メッシュ)を統計的に抽出し,放棄水田,畦畔,二次林,水田脇植生を対象に1m×1m~10m×10mの方形区を設置し,種組成,種ごとの高さ及び被度,位置情報等を中心とした植生データを収集する。また,空中写真の判読等により土地被覆状況に関するGISデータを作成する。
  3. 利根川中下流域を代表する農業生態系クラスを事例として,上記の方法により得られた植生データをもとに,統計的な手法を用いて群落タイプを類型化した(図2)。この結果は,別途実施した詳細な植生調査の結果とほぼ一致し,指標種もおおむね共通していることが確認された。以上から,本調査・解析システムで得られた植生情報は,当該クラスの植生分布状況を精度よく示していると考えられる。
  4. 本調査・解析システムで得られた土地被覆データを利用することにより,チョウ類をはじめとする多様な生物の生息環境と関連の深い景観構造として,森林と水田の境界線長を算出し,土地利用タイプとの関係をモデル化することができる。さらに,このモデルを国土数値情報に適用することにより,生物生息ポテンシャル図を作成し,生物生息環境の変動を把握することが可能である(図3)。
成果の活用面・留意点
  1. 本景観・植生調査情報システムは,地域スケールから国土スケールに至る生物相の長期モニタリングのフレームとして活用できる。具体的なデータフォーマットやデータ管理の方法等については,実用化に向けての検討をさらに進める必要がある。
  2. 植生変動の模式図を用いることにより,休耕田・放棄水田に出現する植生タイプが管理形態の変化に伴ってどのように変化するかを予測することが可能である。
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図表1 225443-1.jpg
カテゴリ 水田 データ管理 モニタリング

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